バドミントンは、狭いコート内を激しく動き回る非常にハードなスポーツです。そのため、試合中に適切な水分補給を行うことは、集中力を維持し、足のつりや脱水症状を防ぐために極めて重要です。しかし、バドミントンの公式試合には、水分を摂るタイミングやマナーについて厳格なルールが存在することをご存じでしょうか。
練習中と同じ感覚で勝手にコートを離れて水を飲んでしまうと、警告の対象になることもあるため注意が必要です。この記事では、バドミントンの試合中における水分補給の正しいタイミングやルール、さらには最高のパフォーマンスを発揮するための効果的な飲み方について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
ルールを正しく理解し、効率的な水分補給を行うことで、試合の後半でもバテない体作りを目指しましょう。競技者として知っておきたいマナーについても触れていますので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
バドミントンの試合中における水分補給のタイミングとルール

バドミントンの試合では、審判の管理のもとで進行が行われるため、選手が自分の好きなタイミングで自由に水分を摂ることはできません。まずは、ルールで定められている基本的なタイミングについて正しく理解しましょう。
11点に到達した際のインターバル
バドミントンの試合では、どちらかのサイドが11点に到達した時点で、60秒を超えない範囲のインターバルが設けられます。この時間は、水分補給を行うための最も一般的なタイミングです。審判が「インターバル」を宣告した後、速やかに水分を摂取することができます。
ただし、この60秒という時間は非常に短いため、のんびりしている暇はありません。ドリンクを飲み、汗を拭い、コーチのアドバイスを聞くといった一連の動作を効率よく行う必要があります。残り20秒になると審判からコールがあるため、それまでにコートに戻る準備を整えましょう。
インターバル中はコートを離れることができますが、基本的には指定されたエリア内(審判の椅子の近くなど)で補給を行います。この時間にしっかりと水分とミネラルを補っておくことが、第1ゲーム後半や最終ゲームでの粘り強さにつながります。
ゲーム間(チェンジエンド)の休憩時間
第1ゲームと第2ゲームの間、あるいは第2ゲームと第3ゲームの間には、120秒を超えない範囲の休憩(インターバル)が設定されています。ここでは11点時の休憩よりも長い時間が確保されているため、より落ち着いて水分補給を行うことが可能です。
このタイミングでは、単に喉を潤すだけでなく、失われた水分量をしっかり取り戻すイメージで飲みましょう。また、エネルギーが不足していると感じる場合は、ゼリー飲料などで糖分を補給する選手も多く見られます。120秒という時間は、戦術の立て直しとともに、身体をリセットするための貴重な時間です。
チェンジエンド(コートの入れ替え)を伴うため、自分の荷物やドリンクを持って移動する必要があります。スムーズに移動し、指定された場所で速やかに補給を開始できるよう、自分のボトルをまとめておく工夫も大切です。
ラリー中に勝手に水分を摂ることは禁止
バドミントンのルールにおいて、試合は「最初のサービスから試合終了まで連続して行われなければならない」と定められています。したがって、ラリーの合間であっても、審判の許可なく勝手にコートを離れて水を飲みに行くことは禁止されています。これは試合の進行を不当に遅らせないためのルールです。
もし喉が渇いてどうしても水分を摂りたい場合は、シャトル交換のタイミングなどに主審に対して「ウォーター、プリーズ」とリクエストし、許可を得る必要があります。審判が認めれば、ラリーの合間でも一口飲むことができますが、頻繁に要求すると遅延行為とみなされる可能性があるため注意してください。
基本的には、11点のインターバルとゲーム間の休憩まで我慢するのが一般的です。そのため、喉が渇く前に、休憩時間を利用して「計画的に」飲んでおくスキルが求められます。自分のコンディションを把握し、ルールの中で最大限の補給を行うことが勝利への一歩となります。
試合中に水分を摂る際のマナーと注意点

ルールとして定められていること以外にも、バドミントン競技者として守るべきマナーや、スムーズに試合を進行させるための注意点があります。これらを守ることは、相手選手や審判への敬意にもつながります。
審判への許可とコミュニケーション
インターバル以外のタイミングで水分を摂りたい場合、必ず主審に合図を送り、許可を得なければなりません。手を挙げて「Water?(ウォーター?)」と尋ねるか、ドリンクを飲むジェスチャーをして確認しましょう。審判が頷いたり、許可の合図を出したりしてから動くのが鉄則です。
審判は試合の進行速度をコントロールしています。試合展開が速い時や、相手がサーブを打とうとしている時に中断させるのは、マナー違反ととられることもあります。許可を得た際も、ダラダラと歩くのではなく、機敏に動いてすぐにコートに戻る姿勢を見せることが大切です。
また、ダブルスの場合は、自分だけでなくパートナーの状態も確認しましょう。二人同時に水分を摂ることで、時間のロスを最小限に抑えられます。審判との良好なコミュニケーションは、試合のリズムを自分たちのものにするためにも役立ちます。
ドリンクボトルの置き場所と管理
公式試合では、ドリンクボトルの置き場所も指定されています。一般的には、審判の椅子の下や、コートサイドの指定されたカゴの中などに置くことになります。コート内にボトルを持ち込むことは、万が一中身がこぼれた際に床が滑り、大怪我につながる恐れがあるため厳禁です。
自分のドリンクがどれかすぐに分かるように、ボトルに目印をつけたり、特徴的な色のケースに入れたりしておく工夫も必要です。インターバルは短いため、探す時間を省くことが重要になります。また、スクイズボトル(押し出して飲むタイプ)を使用すると、キャップを開ける手間が省け、素早く飲むことができます。
飲み終わった後は、ボトルのキャップを確実に閉め、元の場所に正しく戻しましょう。床に水滴が落ちていないか確認することも大切です。もし水がこぼれてしまった場合は、すぐに審判に伝え、モップで拭いてもらうなどの対応を依頼してください。安全面への配慮は選手の義務です。
タオルを使うタイミングとの兼ね合い
バドミントンの試合では、水分補給と同時にタオルの使用も制限されています。基本的にタオルを使えるのは、水分補給と同じインターバルのタイミング、あるいは審判が許可したラリーの合間です。ドリンクを飲むことと汗を拭くことをセットで行うのが効率的です。
夏場の試合など、汗が目に入ってプレーに支障が出るような場合は、審判にタオル使用の許可を求めましょう。この際、ついでに一口水分を摂ることも可能ですが、あくまで審判の判断が優先されます。「水分補給はOKだがタオルはNG」といった状況は少ないですが、常に審判の指示に従ってください。
タオルの置き場所もドリンクと同様に指定されています。自分のタオルとボトルを近くにまとめて置いておくことで、限られた時間を最大限に活用できます。試合のリズムを崩さず、かつ自分のコンディションを整えるためのルーチンを確立しておくと、精神的な安定にもつながります。
パフォーマンスを維持する効果的な飲み方

何をどのように飲むかによって、試合中の体の動きは大きく変わります。ただ喉を潤すだけでなく、バドミントンの特性に合わせた効率的な飲料摂取の知識を身につけましょう。
吸収の速さを考慮したスポーツ飲料の選び方
試合中に飲む飲料は、水やお茶よりも、体への吸収が早いスポーツドリンクが適しています。特に、「ハイポトニック飲料」と呼ばれる、安静時の体液よりも浸透圧が低いタイプがおすすめです。これは運動中の発汗によって薄くなった体液に素早く吸収される特徴があります。
一般的なスポーツドリンク(アイソトニック飲料)は、糖分が比較的高く、安静時のエネルギー補給には向いていますが、激しい運動中には吸収が少し遅くなることがあります。もし市販のアイソトニック飲料を使う場合は、少し水で薄めることで、運動中に適した浸透圧に調整することが可能です。
糖分はエネルギー源として必要ですが、多すぎると胃もたれの原因になることもあります。自分の体調や当日の気温に合わせて、濃度を調整したドリンクを準備しておくのが理想的です。粉末タイプを活用すれば、その日の状況に合わせてカスタマイズしやすくなります。
一度に飲む量と胃への負担
インターバルで時間が限られているからといって、一度に大量の水分をガブ飲みするのは避けるべきです。胃の中に大量の水分が溜まると、その後の激しい動きで腹痛を起こしたり、体が重く感じたりする原因になります。特にバドミントンはジャンプや急停止が多いため、胃への負担は顕著に現れます。
理想的な飲み方は、1回の補給で150ml〜200ml程度を「一口ずつ、噛むように飲む」ことです。少しずつ摂取することで、胃への衝撃を和らげながら効率よく吸収させることができます。一口飲んでから少し間を置き、再び飲むといったリズムを意識してみてください。
喉の渇きを感じる前に少しずつ補給し続けることが、脱水を防ぐポイントです。乾きを感じてからでは、すでに体内の水分はかなり不足しており、そこから大量に飲んでも即座には回復しません。各インターバルで決まった量を摂取する習慣をつけましょう。
飲み物の温度が体に与える影響
ドリンクの温度も、吸収速度や体温調節に影響を与えます。一般的には、5℃〜15℃程度に冷やされた状態が、最も胃からの吸収が速く、かつ内臓を冷やしすぎて機能を低下させる心配も少ないとされています。キンキンに冷えすぎた氷水は、胃腸を刺激して消化不良を起こす可能性があるため注意が必要です。
一方で、夏場の酷暑環境での試合では、少し冷ための飲み物を摂ることで、上昇しすぎた深部体温を内側から下げる効果も期待できます。クーラーボックスを活用し、適切な温度を保てるように管理しましょう。保冷機能の高いステンレスボトルを使用するのも一つの手です。
逆に冬場の寒い体育館では、常温に近い温度の方が体に優しい場合があります。環境に合わせて温度を使い分けることで、常に最適なコンディションを維持できるようになります。自分の体がどの程度の温度を好むのか、普段の練習から試しておくことが重要です。
飲料選びのポイント
・運動中は吸収の速い「ハイポトニック」が理想
・アイソトニック飲料は水で少し薄めて調整する
・一度に大量に飲まず、小分けにして摂取する
・温度は5〜15℃を目安に、季節に応じて微調整する
試合前後のコンディショニングと水分管理

試合中の補給だけでなく、試合が始まる前と終わった後の水分管理が、パフォーマンスの最大化と疲労回復の鍵を握ります。一日を通してベストを尽くすための戦略を立てましょう。
試合開始前の「プレハイhydration」
試合が始まってから水分を摂り始めるのでは遅すぎます。試合開始の約30分〜1時間前までに、計画的に水分を溜めておく「プレハイhydration(プレハイイドレーション)」を行いましょう。これにより、運動開始直後の急激な体温上昇を抑え、心拍数の安定を図ることができます。
具体的には、試合開始の2時間前までに500ml程度、その後試合開始直前までに250ml程度を少しずつ摂取するのが目安です。直前に飲みすぎるとトイレが近くなるため、自分の体質に合わせて量を微調整してください。この段階では、エネルギー源となる糖分を含んだドリンクが適しています。
しっかりとした準備ができていれば、第1ゲームの途中で極端な喉の渇きを感じることは少なくなります。特に緊張しやすい人は口の中が乾きやすいため、少量ずつこまめに含ませるようにすると、精神的なリラックス効果も得られるでしょう。
試合終了後のリカバリーと栄養補給
試合が終わった直後も、水分補給は続きます。試合中に失われた体重の減少分を補うように、ゆっくりと水分を摂りましょう。バドミントンは1日で複数試合こなすことも多いため、次の試合に向けたリカバリーが極めて重要になります。
このタイミングでは、水分だけでなく「タンパク質」や「糖質」を同時に摂取することで、筋肉の修復を早めることができます。プロテイン飲料や、100%のオレンジジュース、バナナなどを組み合わせるのが効果的です。クエン酸を含む飲料も、乳酸の代謝を促し疲労感を軽減してくれます。
また、試合直後は内臓も疲弊しているため、刺激の強い飲み物や冷たすぎるものは避け、胃腸に優しいものを選んでください。お風呂上がりや就寝前まで、こまめに水分を摂り続けることで、翌日の筋肉痛や倦怠感を最小限に抑えることができます。
足のつりを予防するためのミネラル摂取
バドミントンの試合後半で「足がつる」原因の多くは、水分不足とミネラルバランスの崩れです。特に汗とともに失われるナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムといった電解質の不足が、筋肉の異常収縮を引き起こします。
これらを補うためには、スポーツドリンクに加えて「塩飴」や「塩分タブレット」をインターバル中に併用するのも一つの方法です。特にマグネシウムは筋肉の弛緩に関わっているため、これを含むサプリメントをあらかじめ摂取しておくと、足がつるリスクを大幅に下げることができます。
また、普段の食事からミネラル豊富な食材(海藻類やナッツ、緑黄色野菜など)を意識して摂ることも重要です。試合当日だけの対策だけでなく、日常的な食生活がコート上でのパフォーマンスを支えていることを忘れないでください。
練習中から自分の汗の量を把握しておきましょう。練習前後に体重を測り、減少した分が失われた水分量です。これをベースに、試合当日の補給量をシミュレーションしておくと安心です。
夏場の体育館や過酷な環境での対策

バドミントンの会場となる体育館は、夏場になると蒸し風呂のような状態になることがあります。窓を開けられない(風でシャトルが流れるため)という特性上、熱中症リスクが非常に高く、通常以上の対策が求められます。
熱中症を防ぐための塩分チャージ
高温多湿の環境では、発汗量が爆発的に増えます。水だけを大量に飲んでしまうと、血液中の塩分濃度が下がりすぎてしまい、かえって体調を崩す「自発的脱水」という現象が起こります。これを防ぐために、意識的に塩分を摂取する必要があります。
インターバルの60秒でドリンクと一緒に塩分タブレットを口にする習慣をつけましょう。噛み砕いて素早く吸収できるタイプが、試合中の補給には向いています。また、梅干しなどの伝統的な塩分補給食も、クエン酸効果と相まって非常に有効な選択肢です。
自分の体調に異変を感じたら(めまい、立ちくらみ、異常な動悸など)、無理をせず審判に申し出てください。バドミントンは紳士のスポーツですが、健康を損なってまで続けるべきではありません。過酷な環境下では、自分自身の安全を守る判断力も重要なスキルの一つです。
深部体温を下げるアイシングの併用
水分補給と合わせて行いたいのが、外部からの冷却です。インターバル中に氷嚢(ひょうのう)や冷たいペットボトルを、首筋、脇の下、太ももの付け根などの太い血管が通っている場所に当てることで、効率よく深部体温を下げることができます。
体温が上がりすぎると、脳の機能が低下して判断ミスが増えたり、シャトルへの反応が遅くなったりします。物理的に体を冷やすことは、集中力を維持するための最も即効性のある方法です。ドリンクを冷やすためのクーラーボックスに、予備の氷嚢や濡れタオルを用意しておきましょう。
また、最近では手のひらを冷やす「AVA血管冷却」という手法も注目されています。専用の冷却パックを握るだけで、効率よく体温上昇を抑制できるというものです。最新のコンディショニング方法を取り入れることで、ライバルに差をつけることができるかもしれません。
自分の体調に合わせた微調整
水分補給の正解は、その日の体調や湿度、試合の強度によって毎回変わります。教科書通りの量を飲むのではなく、自分の体の声を聞くことが最も大切です。お腹がチャプチャプする感じがあるなら少し控え、尿の色が濃い場合は明らかに不足している証拠です。
大会は朝から夕方まで続くことが多く、待ち時間での過ごし方も影響します。冷房の効いた待機場所と、暑いコートの温度差で自律神経が乱れやすいため、待機中も常温の水を少しずつ飲むなどして、急激な変化に備えておきましょう。
自分のルーチンを確立しつつも、現場の状況に合わせて柔軟に対応できる選手は、どんな過酷な試合でも崩れることがありません。水分補給を「単なる作業」ではなく「戦術の一部」として捉え、試合に臨む姿勢を整えましょう。
| 対策項目 | 具体的な方法 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 塩分補給 | 塩分タブレット、経口補水液 | 自発的脱水の防止、筋痙攣の予防 |
| 外部冷却 | 氷嚢で首や脇を冷やす | 深部体温の上昇抑制、集中力維持 |
| 環境適応 | 常温水と冷水の使い分け | 胃腸への負担軽減、自律神経の安定 |
まとめ:バドミントンのルールを守って効果的な水分補給を
バドミントンの試合における水分補給は、単に喉を潤す行為ではなく、勝利のために計算された戦略の一つです。公式ルールで定められた「11点時の60秒インターバル」や「ゲーム間の120秒インターバル」を最大限に活用し、審判の許可を得た上でマナーを守って補給を行いましょう。
パフォーマンスを維持するためには、以下のポイントを意識することが大切です。
・ルール上の補給タイミング(11点、ゲーム間)を逃さない
・審判とのコミュニケーションを大切にし、勝手な行動は避ける
・吸収の速いハイポトニック飲料や、適切な濃度のスポーツドリンクを選ぶ
・一度に大量に飲まず、胃に負担をかけないよう少量ずつ摂取する
・試合前後の管理も含め、ミネラルバランスを整えて足のつりを防ぐ
適切な水分補給は、肉体的なスタミナだけでなく、高度な戦略を練るためのクリアな思考も支えてくれます。次の試合では、今回ご紹介したタイミングやルール、そして飲み方のコツを実践して、最高のコンディションでコートに立ち続けてください。日々の練習と同じくらい、自分の体をケアする知識を大切にしていきましょう。



