バドミントンの試合で、選手と同じくらい重要な役割を担うのが「線審(せんしん)」です。ラインズマンとも呼ばれ、シャトルがコートのラインの内側に入ったか(イン)、外側に出たか(アウト)を判定する重要な存在です。
部活動や地域の大会では、選手自身が線審を務める機会も多く、「自分のジャッジで試合の流れを左右してしまうかもしれない」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。しかし、線審の役割やジャッジの基本を正しく理解すれば、誰でも自信を持って務めることができます。
この記事では、バドミントン上達を目指す方に向けて、線審の基本的な役割から、正確なジャッジをするためのコツ、さらには線審の経験を自身のプレーに活かす方法まで、やさしくわかりやすく解説します。この記事を読めば、あなたも自信を持って線審に臨めるようになるはずです。
バドミントン線審の基本的な役割と重要性

試合を公正に進めるために不可欠な線審。ここでは、その具体的な役割と、なぜ線審が重要なのか、そして主審とどのように連携していくのかについて解説します。
線審(ラインズマン)とは?試合における役割
バドミントンの審判には、試合全体をコントロールする主審(アンパイア)の他に、サービスジャッジや線審などがいます。 なかでも線審は、自身が担当するライン際に落ちたシャトルが「イン」か「アウト」かを判定することを主な役割としています。 高速で飛び交うシャトルの落下点を正確に見極め、選手や観客に明確にジャッジを伝える責任は重大です。
大会の規模によって線審の人数は異なり、2人、4人、国際大会などでは10人といった場合もあります。 人数によって担当するラインの本数が変わります。
- 2人の場合:コートの対角に配置され、それぞれが最も近い2つのライン(サイドラインとバックバウンダリーラインなど)を担当します。
- 4人の場合:各ラインに1人ずつ配置され、1人1本のラインを担当します。
どのラインを担当するかは、試合開始前に主審から指示がありますので、しっかりと確認しましょう。
なぜ線審は重要?公正な試合運営の要
バドミントンは、ほんの数センチの差でポイントが決まる非常にスピーディーなスポーツです。きわどいショットのインかアウトかの判定は、試合の流れを大きく左右する可能性があります。それゆえに、線審による正確で公平なジャッジは、試合の公正性を保つ上で極めて重要です。
選手は線審のジャッジを信頼してプレーに集中します。もしジャッジが曖昧だったり、自信なさげだったりすると、選手は不満や疑念を抱き、プレーに集中できなくなってしまうかもしれません。 逆に、線審が自信を持ってハッキリとジャッジをすれば、選手も納得しやすく、試合はスムーズに進行します。 線審は、選手たちが全力を尽くしてプレーできる環境を作るための、いわば「縁の下の力持ち」のような存在なのです。責任感を持ち、一打一打に集中してジャッジすることが求められます。
主審(アンパイア)との連携とコミュニケーション
線審は独立してジャッジを行いますが、最終的な判定の権限は主審にあります。 そのため、主審との連携は非常に大切です。線審はジャッジを行った後、必ず主審の方を見て、自分の判定が承認されたかを確認します。
もし、主審が線審のジャッジを明らかに誤りと判断した場合、「オーバーコール(訂正)」をすることがあります。 例えば、線審が「アウト」と判定したものの、主審は「イン」だと判断した場合、「コレクション、イン!(インに訂正します)」とコールして判定を覆します。
線審のジャッジ!コールとジェスチャーを覚えよう

線審の判定は、声(コール)と体(ジェスチャー)を使って、選手、主審、観客に明確に伝えます。ここでは、基本的な3つのジャッジと、主審による訂正について具体的に見ていきましょう。
「イン」の判定とジェスチャー
シャトルがラインの内側、もしくはラインの上に落ちた場合は「イン」となります。バドミントンでは、シャトルの先端(コルク部分)がラインに少しでも触れていれば「イン」と判定されます。
「イン」の場合、声は出さずに(無言で)、担当のラインを右手で水平に指し示すジェスチャーを行います。 左利きの人も右手を使うのが基本です。 このジェスチャーは、主審や選手からはっきりと見えるように、自信を持って素早く行いましょう。 たとえ明らかにインに見える場合でも、必ずこのジェスチャーを行うことが大切です。
「アウト」の判定とコール・ジェスチャー
シャトルが担当ラインの外側に落ちた場合は「アウト」です。
「アウト」の場合は、選手や観客にも聞こえるような、はっきりとした大きな声で「アウト!」とコールします。 それと同時に、両腕を肩の高さで水平に広げるジェスチャーを行い、主審に判定を伝えます。 この時も、たとえシャトルがコートのずっと遠くに飛んで行ったとしても、必ずコールとジェスチャーの両方を行うようにしましょう。 きわどい判定ほど、素早く、自信を持って行うことで選手も納得しやすくなります。
シャトルが見えなかった場合のジェスチャー
選手の体やラケットが死角になったり、他の要因でシャトルの落下点がはっきりと見えなかったりする場合も起こり得ます。
そのような場合は、正直に「見えなかった」ことを主審に伝える必要があります。その際のジェスチャーは、両手で目を覆うというものです。 このジェスチャーを見た主審が最終的な判断を下します。もし主審も見えなかった場合は、「レット」となり、そのラリーはやり直し(ノーカウント)になります。 あやふやなまま憶測でジャッジするのではなく、見えなかった場合は正直にこのジェスチャーをすることが、公正な試合運営に繋がります。
主審による訂正(オーバーコール)とは
前述の通り、主審は線審のジャッジを訂正する権限を持っています。 線審のジャッジが明らかに誤っていると主審が判断した場合に行われるのが「オーバーコール」です。
例えば、線審が「アウト」と判定したシャトルを、主審が「イン」と判断した場合、主審は「コレクション、イン!」とコールします。 この主審の判定が最終決定となります。 線審としては、自分の判定が覆されると少し気落ちするかもしれませんが、これはあくまで試合をより正確に進めるためのルールです。自分のジャッジに自信と責任を持つことは大切ですが、主審の最終判断には従い、気持ちを切り替えて次のラリーに集中しましょう。
正確なジャッジをするためのコツと心構え

正確なジャッジのためには、技術だけでなく、準備や心構えも重要です。ここでは、服装や座る位置から、集中力の保ち方、迷ったときの考え方まで、ジャッジの精度を高めるための具体的なポイントを解説します。
正しい服装と椅子の位置
線審を務める際の服装に厳密な規定は少ないですが、プレーヤーや背景の色と紛らわしくない、落ち着いた色の服装が望ましいです。また、リラックスして集中できるような、動きやすい服装を選びましょう。
そして、ジャッジの正確性を大きく左右するのが、座る椅子の位置です。
こうすることで、シャトルとラインの前後関係を正確に捉えやすくなります。シングルスとダブルスではサイドラインの位置が変わるため、試合形式に合わせて椅子の位置を調整することも忘れないようにしましょう。 姿勢は、背筋を伸ばして両足を床につけ、前傾姿勢になったり足を組んだりせず、常にジャッジしやすい体勢を保つことが大切です。
集中力を維持するためのポイント
線審は試合中、常に高い集中力が求められます。特に長いラリーが続いたり、試合が終盤に差し掛かったりすると、疲れから集中力が途切れがちになります。
集中力を維持するためのコツは、ラリーとラリーの間に適度にリラックスすることです。ずっとラインだけを凝視していると目が疲れてしまうので、ポイントが決まった瞬間などに少し遠くを見たり、軽く目を閉じたりして、意識的に目を休ませましょう。また、ジャッジをする際はシャトルの落下点だけを追いかけるのではなく、シャトルの軌道を予測しながら見ることがポイントです。 そうすることで、落下点への意識をスムーズに移行させることができます。一打一打に集中し、シャトルがネットを越えて自分の担当エリアに向かってきたら、さらに意識を高めるようにしましょう。
迷ったときの判断基準
どんなに集中していても、「インかアウトか、きわどくて判断に迷う」という場面は必ず訪れます。そんな時、どう判断すればよいのでしょうか。
大前提として、「自分が見えた通りに、正直にジャッジする」ことが最も重要です。周りの声や選手の反応に惑わされてはいけません。 その上で、どうしても迷ってしまう場合は、「イン」寄りに判断するという考え方もありますが、これはあくまで最終手段です。まずは、シャトルのコルク部分がラインに触れたかどうかを基準に判断します。ラインは幅があるため、シャトルがラインのどこかに少しでも触れていればインです。日頃の練習から、きわどいシャトルが実際にインなのかアウトなのかを見ておくことも、いざという時の判断力を養う上で役立ちます。
選手からのプレッシャーにどう対応するか
きわどい判定をした際、選手からアピールを受けたり、不満そうな態度を示されたりすることがあるかもしれません。特に経験の浅い線審にとっては、大きなプレッシャーに感じるでしょう。
しかし、ここで大切なのは動揺せず、冷静に、そして堂々とした態度を保つことです。 あなたはルールに則って、自分が見たままをジャッジしたのですから、自信を持ってください。もし選手のアピールが続くようであれば、あとは主審が対応します。線審が選手と直接議論する必要はありません。一度下したジャッジを、周りの雰囲気に流されて変えてしまうことが、最も信頼を損なう行為です。 どんな状況でも自分のジャッジに責任を持ち、毅然とした態度でいることが、選手からの信頼を得ることに繋がります。
線審の経験を自分のプレーに活かす方法

線審を務めることは、ただ試合運営に貢献するだけでなく、自分自身のバドミントンの技術や戦術眼を向上させる絶好の機会でもあります。ここでは、線審の経験をプレーヤーとしての成長にどう繋げるかを見ていきましょう。
ジャッジの視点でシャトルの軌道を読む
線審は、コートのラインという特定の場所から、集中してシャトルの落下点を見続けます。この経験は、シャトルの軌道や速度、角度を読む能力を養うのに非常に役立ちます。普段プレーヤーとしてコートの中にいるときとは全く違う視点から、何本ものショットを見ることになります。
例えば、「この角度から打たれたスマッシュは、ここに落ちるのか」「この高さのクリアは、バックバウンダリーラインを越えやすいな」といった発見があるでしょう。特に、自分が苦手とするコースや、相手に決められやすいショットの軌道を線審の視点から客観的に観察することで、レシーブ時のポジション取りや次のショットへの準備を改善するヒントが得られます。線審をしながら、「自分ならこのシャトルをどう返すか」をシミュレーションしてみるのも効果的なトレーニングになります。
ルールへの理解を深めて戦略的にプレーする
線審を務めるためには、当然ながら「イン」と「アウト」の基準をはじめとするルールを正確に理解している必要があります。 例えば、シャトルがラインに少しでも触れていればインであること、シングルスとダブルスでのコート範囲の違いなどを再確認することになります。
こうしたルールへの深い理解は、自分のプレーをより戦略的にしてくれます。例えば、サイドラインぎりぎりを狙うショットの精度を高める練習に繋がったり、相手の打ったシャトルがアウトになるかどうかを瞬時に判断し、無理に打ち返さずに見送るという冷静な判断ができるようになったりします。特に、きわどいコースを正確にジャッジできる目は、試合の勝敗を分ける場面で大きな武器となるでしょう。ルールを熟知しているからこそ生まれる、余裕のあるプレーを目指すことができます。
相手のコース取りを予測するヒントを得る
線審をしていると、様々な選手のプレーを間近で観察することができます。自分と同じくらいのレベルの選手から、格上の選手の試合まで、多くのプレーを見ることは非常に勉強になります。
「この体勢からだと、クロスに打ってくることが多いな」「追い込まれた場面では、このコースにロブを上げがちだな」など、選手の癖や、状況に応じたコース取りの傾向が見えてくることがあります。これは、自分が試合をするときの相手の次のショットを予測する上で、非常に貴重なデータとなります。相手の得意なコース、苦手なコースを分析する観察眼が養われ、試合中のラリーで優位に立つための戦略を立てるのに役立つはずです。
まとめ:バドミントン線審の知識を深めてレベルアップしよう

この記事では、バドミントンの線審(ラインズマン)について、その基本的な役割からジャッジの具体的な方法、そして線審の経験をプレーに活かす方法まで、幅広く解説しました。
線審は、シャトルのイン・アウトを判定する公正な試合運営に欠かせない重要な役割です。 正確なジャッジのためには、「イン」「アウト」「見えなかった」場合のコールとジェスチャーを正しく覚え、ラインの延長線上の適切な位置から、自信を持って判定することが大切です。 また、たとえ選手からのプレッシャーがあっても動じず、自分が見たままを正直にジャッジする強い心構えが求められます。
そして、線審を務めることは、シャトルの軌道を読む力や、相手のコース取りを予測する観察眼を養う絶好の機会でもあります。線審の視点から得た学びは、必ずやあなた自身のプレーを向上させるためのヒントになるでしょう。次に線審を任されたときは、ぜひこの記事の内容を思い出し、自信を持って務めてみてください。その経験が、あなたのバドミントン上達への道をさらに切り拓いてくれるはずです。


