バドミントンの練習を始めるとき、シャトルやラケットにはこだわっても、「ネットの張り方」を意識していますか?「なんとなく張られているからそのまま使っている」「高さが合っているかわからない」という方も多いかもしれません。
しかし、バドミントンの上達を目指すなら、正しいネット環境を整えることは非常に重要です。ネットの高さが数センチ違うだけで、クリアーの軌道、ヘアピンの感覚、スマッシュの決定率まで変わってしまいます。正しい張り方を知らずに練習を続けると、試合で通用しない「練習用の感覚」が身についてしまう恐れさえあるのです。
この記事では、バドミントン上達のために不可欠な、公式ルールに基づいた正しいネットの張り方を、準備から手順、チェックポイントまでやさしく解説します。
バドミントンネットの張り方の基本と公式ルール

バドミントンのネットを正しく張ることは、質の高い練習を行うための第一歩です。まずは、国際的なルールで定められている「ネットの高さ」や、ネットを張るために必要な道具、ネットの種類といった基本的な知識をしっかり押さえましょう。
まず知っておきたい!ネットの公式ルール(高さ)
バドミントンのネットの高さは、「中央部(ネットの最も低い部分)で1.524m」、そして「両端のポール際で1.55m」と厳密に定められています。なぜ中央と両端で高さが違うのかというと、ネットは上部に張られたワイヤーや紐で支えられているため、その重みで中央部分が自然と少し沈むからです。この約2.6cmの差が、バドミントンの戦略的なネットプレーを生み出しています。
この高さを守ることは非常に重要です。もしネットが正規の高さより低い場合、スマッシュやドライブなどの攻撃的なショットが簡単に入りすぎてしまい、守備練習の質が下がります。逆に高すぎると、ネットすれすれを狙うヘアピンやロブの感覚が狂い、試合でミスをしやすくなります。練習の時から常に正しい高さを意識することで、実戦で役立つ正確なショット感覚を養うことができるのです。
ネットの種類と特徴(公式用と簡易式)
バドミントンネットには、大きく分けて「公式・競技用」と「簡易式(レジャー・練習用)」の2種類があります。体育館などで本格的に練習する場合は、間違いなく「公式・競技用」を使用します。これは、体育館の床に設置された穴(アンカー)に金属製の頑丈な支柱(ポール)を立て、ワイヤーや専用のベルトで強く張力をかけるタイプです。テンションをしっかりかけられるため、ネットがたるむことなく、シャトルが当たっても正確に跳ね返ります。
一方、「簡易式」は、支柱とネットが一体型になっていたり、組み立て式で持ち運びができたりするタイプです。公園でのレジャーや、体育館が使えない時の自主練習、家庭での練習に使われます。設置は簡単ですが、競技用に比べると安定性に欠け、強いテンションをかけるのが難しい場合があります。上達を目指す場合は、できるだけ競技用のネットが張られた環境で練習するのがベストですが、簡易式を使う場合でも、できるだけ公式ルール(特に高さ1.524m)に近い設定ができるモデルを選ぶことが大切です。
ネットを張るために必要な道具(支柱、ネット本体、メジャー)
体育館で競技用のネットを張るためには、以下の道具が必要です。
- 支柱(ポール): ネットを両側から支える頑丈なポールです。床のアンカーに差し込むタイプや、重り(ウェイト)で固定する自立式があります。通常、体育館に備え付けられています。
- ネット本体: 公式ルールでは、ネットの網目(メッシュ)は1.5cm~2.0cm四方、色は暗色(濃い茶色や黒など)と定められています。ネットの上部は「ホワイトテープ」と呼ばれる白い布で覆われており、このテープ部分にワイヤーや紐が通っています。
- メジャー(巻尺): これが非常に重要です。ネット中央の高さを「1.524m」に正確に合わせるために必須の道具です。専用の高さ測定具(ネットハイトゲージ)が用意されている体育館もあります。
- (必要な場合)アンテナ: バレーボールではよく見かけますが、バドミントンでもパラバドミントン(車いす)などの一部のカテゴリーでは、ネットの両端にアンテナ(ポール)を立てることがあります。一般的なダブルスやシングルスでは通常使用しません。
これらの道具が揃っているか、または体育館のどこに収納されているかを事前に確認しておきましょう。
ステップバイステップ!バドミントンネットの張り方(支柱式)

ここでは、体育館で最も一般的に使用される「支柱式(床のアンカーに差し込むタイプ)」のネットの張り方を、手順を追って解説します。正しい張り方をマスターすれば、練習の質が格段に上がりますよ。
準備編:支柱(ポール)を正しく立てる
まず、コートを確認します。バドミントンコートにはシングルス用ライン(内側)とダブルス用ライン(外側)があります。支柱を立てる位置は、「ダブルス用コートのサイドラインの真上」です。体育館の床には、この位置に支柱を差し込むための穴(床金具、アンカー)が設置されています。
支柱には通常、ネットを巻き取るためのハンドル(ラチェット式やクランク式)がついている側と、ワイヤー(紐)を引っ掛けるだけのフックがついている側があります。どちらをどちら側に立てるかは体育館の設備によりますが、一般的には審判台を置く側にハンドル側を設置することが多いです。まずは両方のポールをしっかりと奥まで差し込み、ぐらつきがないかを確認してください。
実践編(1):ネット本体を支柱に取り付ける
次に、ネット本体を支柱に取り付けます。ネットの上部(白いホワイトテープ部分)には、硬いワイヤーまたは丈夫な紐が通っています。
まず、ハンドルがついていない側(フック側)の支柱から作業を始めるとスムーズです。ワイヤーの端にある輪(アイレット)やフックを、支柱の上部にある突起(フック)にしっかりと引っ掛けます。
次に、ネットをコート中央に向かって広げていき、もう一方の支柱(ハンドル側)までワイヤー(紐)を持っていきます。ワイヤーのもう片方の端を、ハンドル(巻き取り機)の軸にあるフックや穴に通し、外れないように固定します。この時点では、ネットはまだ床に垂れ下がっている状態で大丈夫です。ワイヤーがねじれていないか、ネットが裏表逆になっていないか(通常、メーカーロゴなどが正しい向きになるようにします)を軽く確認しておきましょう。
実践編(2):テンション(張り具合)を調整する
ワイヤー(紐)を両方の支柱にかけたら、いよいよテンション(張力)をかけていきます。ハンドル側の支柱にあるハンドル(またはラチェットレバー)を操作して、ワイヤーを巻き取っていきます。
この時、一気に強く巻き上げるのは避けてください。急激に力を加えると、ワイヤーや支柱、ネット本体に過度な負担がかかり、破損の原因になります。ゆっくりと、ネット全体の張り具合を見ながら巻き上げていきましょう。
最初は、ネットの上部(ホワイトテープ)がピンと張り、ネット中央の高さが床から1.524mよりも「少し高くなる程度」まで巻き上げます。なぜなら、この後、下部や側面を固定すると、その張力で上部が少し沈むことがあるため、最終調整を見越して少し強めに張っておくのがコツです。ただし、張りすぎは厳禁です。支柱が曲がったり、ワイヤーが切れたりする危険があります。
実践編(3):ネット下部と側面を固定する
上部のワイヤーを張るだけでは、ネットは「上辺だけのれんのようにぶら下がっている」状態です。シャトルが当たった時にネットがたわんだり、下をくぐり抜けたりしないよう、ネットの側面と下部もしっかり固定する必要があります。
まず、ネットの側面(ポールに接する部分)には、通常いくつかの紐(マジックテープ式の場合もあります)がついています。これを支柱に結び付け、ネットと支柱の間に隙間ができないように固定します。
次に、ネットの下部にも細い紐が通っています。この紐も、両方の支柱の下部にあるフックや穴に結び付け、ピンと張ります。これにより、ネット全体が「面」としてしっかりと固定されます。特にネット下部がたるんでいると、ネットインすれすれのショットがネットに引っかかったり、下を抜けたりしてしまい、正確な練習ができません。上部、側面、下部、すべてが適度に張られている状態を目指してください。
ネットを張る時の重要チェックポイント

ネットを張り終えたら、必ず「最終確認」が必要です。このチェックを怠ると、せっかくの練習が「ルールと違う環境での練習」になってしまいます。上達のために最も重要なポイントを3つ解説します。
最重要!ネット中央の高さを「1.524m」に合わせるコツ
これが最も重要なチェック項目です。張り終えたら、必ずコートのセンターマーク(シングルスとダブルスのセンターラインが交わるネット直下の点)に立ち、メジャーを使ってネット上端(ホワイトテープの上辺)から床までの垂直距離を測ります。
この高さが、正確に「1.524m」になっていなければなりません。もし高すぎる場合は、ハンドル(巻き取り機)を少し緩めます。低すぎる場合は、さらに巻き上げてテンションを強くします。
これは「5フィート(feet)」という単位をメートル法に換算した数字です。1フィート=0.3048mなので、5フィート=1.524mとなります。
体育館によっては、この1.524mの高さに印がついた専用の測定ポール(ネットハイトゲージ)が用意されていることもあります。それを使えばメジャーよりも簡単に高さをチェックできます。この中央の高さを合わせる作業は、練習の質を担保する上で絶対に妥協してはいけないポイントとして覚えておきましょう。
ポール際(両端)の高さ「1.55m」の確認
中央の高さを1.524mに合わせると、正しくテンションがかかっていれば、両端のポール際(正確にはダブルスサイドラインの真上)の高さは、自動的に「1.55m」に近くなります。ネット自体の構造が、中央が沈むことを前提に作られているからです。
とはいえ、念のため両端の高さもメジャーで確認しておくと万全です。もし、中央が1.524mなのに、両端が1.55mより極端に低い(または高い)場合、いくつかの原因が考えられます。例えば、テンションが弱すぎてネット全体が沈みすぎている、または逆に強く張りすぎている可能性があります。また、ネット側面の紐がしっかりポールに固定されていないと、端だけがたるんでしまうこともあります。中央と両端の高さのバランスが取れているかを確認することで、ネットが正しく「たわんでいる」状態を作ることができます。
「たるみ」をなくすためのテンション調整術
正しい高さを維持するためには、正しい「テンション(張り具合)」が必要です。バドミントンのネットは、ネット全体が「ピン」と張り、手で軽く叩いたときに「パン」と音がするくらいの張り具合が理想です。
もしネットがたるんでいる(テンションが弱い)と、以下のような弊害が起こります。
- シャトルの不規則な跳ね返り: たるんだ網目にシャトルが当たると、勢いが吸収されてしまったり、逆に変な方向に跳ね返ったりします。
- ネットインの感覚が狂う: ネットすれすれを狙うヘアピンや、ネットに当たって入る「ネットイン」の感覚は非常に繊細です。ネットがたるんでいると、本来ならネットインになるはずのショットがネットを越えなかったり、逆にたるみに助けられて入ってしまったりと、実戦とかけ離れた感覚になってしまいます。
- 高さの維持が困難: テンションが弱いと、ネット中央が1.524mよりもさらに沈み込みやすくなります。
練習仲間とネットを張る際は、「なんとなく張る」のではなく、「高さ1.524mを維持できる、適切なたるみのないテンション」を意識して、ハンドルを調整するようにしましょう。
簡易式(家庭用)ネットの張り方と選び方

体育館が使えない日でも練習したい、あるいはレジャーとして楽しみたいという場合に便利なのが「簡易式ネット」です。ここでは、簡易式ネットの特徴と、上達を目指す人が使う場合の注意点について解説します。
簡易式ネットの特徴とメリット・デメリット
簡易式ネットは、その名の通り「簡単に設置できる」ことを目的としたネットです。多くの場合、軽量なポール(金属やプラスチック製)を組み立て、そこにネットを引っ掛けるか、通す仕組みになっています。支柱は床に固定せず、自立式の脚(T字型や三脚タイプ)で支えます。
メリット:
- 持ち運びが容易で、収納ケース付きのものが多い。
- 体育館だけでなく、公園、庭、広場など、ある程度のスペースがあればどこでも設置できる。
- 体育館用の競技用ネットに比べて非常に安価である。
デメリット:
- 安定性が低く、強いテンションをかけるのが難しい(強く張ろうとするとポールごと倒れたり、しなったりする)。
- 風の影響を受けやすい(特に屋外)。
- 安価なモデルの中には、公式ルールの高さ(1.524m)や幅(6.1m)を満たしていないものも多い。
レジャー目的なら問題ありませんが、上達を目指すための「自主練」で使う場合は、デメリットを理解した上で選ぶ必要があります。
簡易式ネットの組み立てと張り方の手順
簡易式ネットの多くは、工具不要で組み立てられるよう設計されています。
- パーツの確認: まずは、支柱となるポール、脚となるベース、ネット本体、ポール同士を繋ぐ紐やゴム(テンションをかけるため)など、全ての部品が揃っているか確認します。
- 支柱の組み立て: ベース(脚)を取り付け、そこに分割されたポールを差し込んでいきます。テントのポールのように、ショックコード(ゴム紐)で連結されているタイプもあります。
- ネットの取り付け: ポールにネットの袖(スリーブ)を通すタイプや、ポール上部のフックにネットの紐を引っ掛けるタイプがあります。
- テンション調整: 両側の支柱を立てたら、ネットの上部と下部を引っ張り、適度なテンションをかけます。競技用ネットのような強い張りは期待できませんが、なるべくたるみが少なくなるように調整します。モデルによっては、支柱間の距離を固定するためのベルトや、上部を引っ張るための小さなロープがついているものもあります。
説明書の手順に従えば、誰でも簡単に組み立てられるのが簡易式ネットの利点です。
自主練で使う場合の注意点
簡易式ネットを「上達のための練習」に使う場合、いくつか注意すべき点があります。
最も重要なのは、「高さ」です。購入する際は、必ずネット中央の高さを1.524m(またはそれに近い1.55m固定など)に設定できるモデルを選んでください。レジャー用の中には、高さが1.2m程度しかないものや、高さ調整ができないものもあります。低いネットで練習を続けると、低い軌道のショットに慣れてしまい、いざ公式の高さでプレーした時に「ネットミス」を連発することになります。
また、簡易式はテンションが弱くなりがちです。ネットの「張り」は競技用とは別物だと割り切りましょう。そのため、簡易式ネットでの練習は、スマッシュやドライブの打ち合いよりも、ヘアピンの感覚や、クリアーの基礎的なフォーム固め、フットワークの確認など、限定的な練習に使うのが賢明です。特に屋外で使用する場合、風でシャトルが流されるため、高さの感覚を掴むのはさらに難しくなることを覚えておきましょう。
ネットの正しい管理と収納方法

練習で使ったネットは、次に使う人や、ネット自体の寿命のために、正しく片付ける必要があります。特に体育館の備品は、多くの人が共有するものです。正しい管理方法と収納方法を身につけましょう。
練習後の正しい片付け方
ネットを片付ける際は、張った時と「逆の手順」で行いますが、最も重要なのは「必ずテンションを緩めてから外す」ことです。
- テンションを緩める: まず、ハンドル(巻き取り機)のラチェット(爪)を解除し、ゆっくりとワイヤー(紐)の張りを緩めます。一気に緩めると「バチン!」と大きな音を立てて緩み、ワイヤーやハンドル機構を痛める原因になるため、慎重に操作します。
- 下部・側面の紐を外す: ネット下部と側面をポールに結んでいた紐をすべてほどきます。
- ワイヤーを外す: テンションが完全に緩んだことを確認し、ハンドル側のワイヤーを巻き取り軸から外し、次にもう一方のフック側からも外します。
- ネットを畳む: ワイヤーや紐が絡まらないように注意しながら、ネットを丁寧に畳んでいきます。
この手順を守らないと、ワイヤーが絡まって次に使えなくなったり、ネットが破れたりする原因になります。
ネットの洗い方とメンテナンス
体育館のネットは、多くの人の汗や、床のホコリを吸っています。基本的には施設管理者が清掃を行いますが、自分たちで管理している場合、汚れがひどい場合はメンテナンスが必要です。
ネットの素材(主にナイロンやポリエステル)は、水洗いが可能なものが多いです。ただし、洗濯機で回すのは厳禁です。網目が崩れたり、ワイヤーが故障したりします。もし洗う場合は、大きなタライや浴槽などで中性洗剤を使い、優しく押し洗いするのが基本です。その後は、洗剤が残らないようによくすすぎ、絞らずに日陰でしっかり自然乾燥させます。
日常的なメンテナンスとしては、「破れやほつれのチェック」が重要です。網目が一箇所でも切れると、そこからシャトルがすり抜けたり、破れが広がったりします。小さなほつれであれば、早めに補修糸などで修理しておきましょう。
長持ちさせるための保管方法
ネットの寿命は保管方法によって大きく変わります。最も避けるべきは「湿気」と「直射日光」です。
練習後、汗や湿気を含んだままネットを畳んでバッグや倉庫に押し込むと、カビや悪臭の原因になります。また、素材の劣化も早まります。理想は、風通しの良い日陰で乾燥させてから収納することですが、体育館の備品では難しい場合もあります。
収納する際は、必ず専用の収納バッグに入れるか、体育館の備品庫の決められた場所に置きます。ワイヤーが折れ曲がったり、重いものの下敷きになったりしないように注意しましょう。特に、ワイヤー(上部の紐)が他のネットや道具と絡まないように、束ねて畳むことが大切です。競技用のネットは高価な備品ですので、丁寧に扱う意識を持ちましょう。
まとめ:バドミントンネットの正しい張り方をマスターして練習の質を高めよう

この記事では、バドミントン上達を目指す人が知っておくべき「バドミントンネットの張り方」について解説しました。
- 最重要ルールは高さ(中央1.524m、両端1.55m)であること。
- 体育館の支柱式ネットは、準備、取り付け、テンション調整、側面・下部の固定、という手順で張ること。
- 張り終えたら必ずメジャーで中央の高さを測定し、調整すること。
- ネットは「たるみ」がなく、「ピン」と張った状態が理想であること。
- 簡易式ネットは便利だが、練習で使うなら「高さ」を公式ルールに合わせられるモデルを選ぶこと。
正しいネット環境での練習は、正しいショットの感覚を体に染み込ませるために不可欠です。逆に、高さが違ったり、たるんだネットで練習を続けたりすると、上達を妨げる「悪いクセ」がついてしまいます。次に体育館でネットを張る時は、ぜひリーダーシップを取って、メジャーを使い、完璧な高さと張りを追求してみてください。そのこだわりが、あなたのバドミントン上達への近道となるはずです。


