バドミントンでプロ転向するメリット・デメリットとは?実業団との違いや成功への条件

バドミントンでプロ転向するメリット・デメリットとは?実業団との違いや成功への条件
バドミントンでプロ転向するメリット・デメリットとは?実業団との違いや成功への条件
選手情報とバド界ニュース

近年、日本のバドミントン界ではトップ選手が次々とプロへ転向する流れが加速しています。これまでは企業に所属して活動する「実業団選手」が主流でしたが、桃田賢斗選手や奥原希望選手、奈良岡功大選手といったスター選手たちがプロの道を選んだことで、プロという生き方が注目を集めるようになりました。

しかし、バドミントンでプロ転向を果たすことは、華やかな面ばかりではありません。活動の自由度が増す一方で、これまで企業が守ってくれていた安定を自ら手放すことにもなるからです。プロとして生きていくためには、競技力だけでなく、ビジネスとしての視点や自己管理能力も問われます。

この記事では、バドミントンのプロ転向におけるメリットとデメリットを詳しく解説します。実業団との具体的な違いや、どのような選手がプロに向いているのかについても深掘りしていくので、将来プロを目指す選手や、バドミントン界の動向を知りたいファンの方はぜひ参考にしてください。

  1. バドミントンのプロ転向とは?メリット・デメリットを考える前に知るべき基礎知識
    1. 日本バドミントン界におけるプロの定義
    2. なぜ今、プロに転向する選手が増えているのか
    3. プロ選手と実業団選手の主な契約形態の違い
    4. 世界ランキングとプロ活動の密接な関係
  2. 自由度と可能性が広がるプロ転向の大きなメリット
    1. 遠征スケジュールや出場大会を自由に選択できる
    2. スポンサー契約による収入アップの可能性
    3. 自分専用のコーチやトレーナーとチームを組める
    4. 自身のブランディングとファンとの交流の自由
  3. 知っておくべきプロ転向のデメリットと現実的なリスク
    1. 遠征費やスタッフ雇用費などの全額自己負担
    2. 成績不振がダイレクトに収入減へ直結する不安
    3. 社会保障やセカンドキャリアへのサポートが薄くなる
    4. 練習拠点の確保や事務手続きをすべて自分で行う負担
  4. 実業団とプロの環境を項目別に詳しく比較
    1. 収入の安定性とボーナスの有無
    2. 練習環境と施設利用の利便性
    3. 引退後のキャリアパスと企業内での立場
    4. 日本代表活動との両立のしやすさ
  5. プロ転向を成功させるために必要な選手個人の資質
    1. 徹底した自己管理能力とストイックな姿勢
    2. スポンサーを惹きつける魅力と発信力
    3. チームをマネジメントするリーダーシップ
  6. バドミントンのプロ転向はメリット・デメリットを見極めることが重要

バドミントンのプロ転向とは?メリット・デメリットを考える前に知るべき基礎知識

バドミントンにおけるプロ転向を正しく理解するためには、まず日本特有の「実業団システム」との違いを知る必要があります。日本では長らく、企業の社員として給与を得ながら部活動としてバドミントンを続ける形が一般的でした。しかし、現在はその枠を超えた活動を選択する選手が増えています。

日本バドミントン界におけるプロの定義

バドミントン界におけるプロ選手とは、一般的に「特定の企業と雇用契約を結ばず、競技活動を主な収入源とする選手」のことを指します。実業団選手が「会社の従業員」として給与を受け取るのに対し、プロ選手はスポンサー企業との契約料や、大会での賞金、イベント出演料などで生計を立てます。

また、プロ選手は自分自身が個人事業主のような立場になるため、活動のすべてを自己責任で管理します。これには練習環境の確保から、遠征の手配、スタッフの雇用などが含まれます。選手個人が一つの「チーム」を運営するような形態になるのが、大きな特徴といえるでしょう。

現在の日本バドミントン協会では、プロ登録という明確な区分があるわけではありませんが、所属先を「個人」としたり、自身でマネジメント会社を設立したりすることで、プロとしての活動をスタートさせるのが一般的です。実業団という組織の傘から出ることで、より広い世界での活動が可能になります。

なぜ今、プロに転向する選手が増えているのか

プロ転向者が増えている背景には、世界バドミントン連盟(BWF)が主催するワールドツアーの賞金額が上昇していることが挙げられます。かつては賞金だけで生活するのは困難でしたが、現在はトップランカーになれば、年間で数千万円単位の賞金を獲得することも夢ではなくなりました。

加えて、SNSの普及により選手個人がファンや企業に直接アピールできるようになったことも大きな要因です。企業側にとっても、特定の実業団チームを支援するより、個人のスター選手を直接サポートする方が広告効果が高いと判断されるケースが増えています。これにより、スポンサー獲得のハードルが以前より下がりました。

さらに、海外の強豪国であるデンマークやインドなどの選手が、個人でチームを組んで活動している成功例も影響しています。グローバルな視点で戦うためには、企業の一員という枠組みよりも、自分に最適な環境を柔軟に構築できるプロの方が有利であるという認識が広まったのです。

プロ選手と実業団選手の主な契約形態の違い

実業団選手とプロ選手の決定的な違いは、収入の源泉と身分保障にあります。実業団選手は企業の「正社員」や「契約社員」であり、練習や試合が仕事の一部として認められています。そのため、結果が出ない時期でも一定の月給が保証され、社会保険や退職金などの福利厚生も充実しています。

一方、プロ選手は複数の企業と「スポンサー契約」を締結します。これは所属先として名前を出す「メインスポンサー」や、ラケットやウェアを提供する「サプライヤー」など多岐にわたります。契約内容は個別に交渉され、期間や金額、ボーナスの条件などが細かく設定されるのが通常です。

また、実業団選手は引退後にその企業で社業に専念し、サラリーマンとしてのキャリアを継続する道が用意されていることが多いです。しかし、プロ選手は現役中の稼ぎや知名度を活かして、引退後の道を自ら切り開く必要があります。このように、現在の安定か、将来の可能性かという対極的な構造があります。

世界ランキングとプロ活動の密接な関係

プロとして活動を維持するためには、世界ランキングが非常に重要な意味を持ちます。なぜなら、ランキングが高いほどグレードの高い大会に出場でき、そこで得られる賞金額も高くなるからです。スポンサー企業も、世界トップレベルで活躍し、メディア露出が多い選手に高額な契約金を提示します。

もし世界ランキングが下がってしまうと、大会への出場権を失うだけでなく、スポンサー契約の更新が危うくなるリスクもあります。実業団であればランキングに関わらずチームが遠征をサポートしてくれる場合もありますが、プロは「実力=資金力」というシビアな現実に向き合わなければなりません。

そのため、プロ選手は常にランキングポイントを計算しながら、どの大会に出るべきか戦略的にスケジュールを組む必要があります。勝利が直接、次戦の遠征費やスタッフの給与につながるため、一戦一戦にかかるプレッシャーは実業団時代の比ではありません。この緊張感が、選手をさらに強くさせる側面もあります。

自由度と可能性が広がるプロ転向の大きなメリット

バドミントンでプロに転向する最大の魅力は、自分自身の意志で競技人生のすべてをコントロールできる点にあります。組織のルールに縛られず、強くなるために最適な選択を積み重ねられることは、トップアスリートにとって何にも代えがたいメリットとなります。

【プロ転向の主なメリット】

・自分に最適な練習環境や指導者を自由に選べる

・出場大会や遠征スケジュールを完全にコントロールできる

・スポンサー収入により実業団時代を大きく上回る収入の可能性がある

・自身のブランド価値を高め、多方面での活動が可能になる

遠征スケジュールや出場大会を自由に選択できる

実業団チームに所属している場合、基本的にはチームが決めたスケジュールに従う必要があります。国内のリーグ戦(S/Jリーグ)や全日本総合選手権への出場が最優先されることが多く、世界を転戦したい選手にとっては、時としてハードな日程や不都合な調整を強いられる場面もありました。

プロになれば、自身のコンディションや世界ランキングの状況に合わせて、どの大会に出場するかを100%自分の判断で決められます。例えば、怪我の予兆がある際に無理をせず休養を優先したり、ポイントを稼ぎやすい特定の地域の大会に絞って遠征したりといった柔軟な戦略が可能です。

また、海外の拠点へ長期合宿に行ったり、現地のクラブチームの練習に参加したりすることも自由です。自分自身の成長にとって今何が必要かを最優先し、組織の都合を考慮せずに動けることは、世界トップを目指す上で極めて強力な武器になります。

スポンサー契約による収入アップの可能性

プロ転向の経済的なメリットは、成功すれば実業団時代の何倍もの収入を得られる可能性があることです。実業団選手の給与は、企業の給与規定に基づいているため、どんなに世界で活躍しても年収には一定の上限があります。しかし、プロは自分自身の価値を市場に問い、直接対価を受け取れます。

トップ選手になれば、ラケットメーカーだけでなく、自動車、飲料、食品、通信など、幅広い業種の企業と契約を結ぶことができます。契約金だけでなく、大会で優勝した際のインセンティブ(報奨金)を厚く設定してもらうことで、結果を出せば出すほど青天井に収入を増やすことが可能です。

また、肖像権を自分で管理できるため、テレビ出演やCM、イベント、書籍の出版などの副収入もすべて自分の手元に残ります。現役期間が限られているアスリートにとって、短期間で大きな資産を築ける可能性があるプロ転向は、将来への投資という意味でも非常に夢のある選択肢といえます。

自分専用のコーチやトレーナーとチームを組める

実業団ではチーム全体にコーチやトレーナーが配置されており、個別の細かな要望に応えてもらうには限界があります。しかし、プロに転向すれば、自分だけの「チーム」を構築できます。自分のプレースタイルを誰よりも理解しているコーチを個人雇用し、24時間体制でサポートを受けることが可能です。

専属のトレーナーを帯同させれば、遠征先での体のケアや食事管理も徹底できます。また、戦術分析を行うアナリストを雇い、対戦相手の傾向を詳細に研究してもらうこともできるでしょう。このように、自分を勝たせるためだけに動いてくれるスタッフを周囲に固められるのは、プロならではの贅沢です。

こうしたオーダーメイドの環境は、技術の微調整や精神面の安定に大きく寄与します。特にレベルが拮抗する世界トップクラスの戦いでは、こうした細かな環境の差が勝敗を分ける決定打になることも少なくありません。自分の弱点を克服するために最適な人材を自由に招集できるのは、大きな強みです。

自身のブランディングとファンとの交流の自由

実業団選手は企業の看板を背負っているため、SNSの発信やファンとの交流、メディア露出において企業の広報規定に従わなければなりません。発言内容に制約があったり、個人の活動が制限されたりすることも珍しくありませんが、プロは自分自身がブランドの主役となります。

自身のYouTubeチャンネルを開設して技術解説を行ったり、独自のファンクラブを設立して密な交流を深めたりと、ファンとのエンゲージメント(繋がり)を自由に高められます。これにより、競技引退後もファンが離れず、コーチ業や解説者、ビジネス展開など、セカンドキャリアの基盤を現役中から作ることができます。

また、社会貢献活動やチャリティイベントなども、自分の志に基づいて積極的に行うことが可能です。バドミントンの普及活動を独自に展開することで、競技の枠を超えた存在感を放つことができるようになります。こうした自己表現の自由は、モチベーションの維持にも大きく貢献します。

知っておくべきプロ転向のデメリットと現実的なリスク

プロという選択には魅力的な側面がある一方で、常に隣り合わせのリスクも存在します。実業団という安全網を外れることは、すべての責任を自分一人で負うことを意味します。ここでは、多くの選手が直面する厳しい現実について見ていきましょう。

【プロ転向の主なデメリット】

・遠征費やコーチの給与など、膨大な活動費をすべて自分で賄う必要がある

・怪我や成績不振によって収入がゼロになるリスクがある

・確定申告や契約交渉、遠征の手配など事務作業の負担が増える

・企業のような福利厚生や、引退後の雇用保障がない

遠征費やスタッフ雇用費などの全額自己負担

プロとして世界を転戦する場合、最も大きな負担となるのが活動費です。年間の国際大会出場にかかる航空券代、宿泊費、エントリー費などは年間で数百万円から一千万円以上に達することもあります。これを実業団であれば会社が全額負担してくれますが、プロはすべて自分持ちです。

さらに、専属コーチやトレーナーを雇う場合、その人たちの給与だけでなく、彼らの遠征費も選手が負担しなければなりません。チームを維持するためには、年間で数千万円レベルの資金を確保し続ける必要があり、これをスポンサー収入や賞金だけで賄うのは並大抵のことではありません。

資金繰りが苦しくなれば、本来出場すべき大会を断念したり、スタッフの数を減らしたりせざるを得なくなります。そうなれば競技力にも影響を及ぼし、さらに成績が下がるという負のスパイラルに陥る危険もあります。プロは常に「経営者」としての金銭感覚を持たなければなりません。

成績不振がダイレクトに収入減へ直結する不安

実業団選手であれば、たとえスランプに陥って大会で早期敗退が続いたとしても、毎月の給料が変わることはありません。しかし、プロにとって成績不振は死活問題です。大会での賞金が入らないだけでなく、スポンサー企業からの評価が下がり、契約金の大幅な減額や契約打ち切りを提示される恐れがあります。

また、大きな怪我をして長期離脱を余儀なくされた場合、プロ選手には何の保障もありません。試合に出られなければ露出も減り、スポンサー価値は一気に下落します。医療費がかさむ一方で収入が途絶えるという、精神的にも極めて過酷な状況に追い込まれるリスクを常に抱えています。

この「負けたら終わり」というプレッシャーは、精神的な強靭さを求める一方で、過度なストレスとなって選手のプレーを萎縮させてしまう可能性もあります。実業団というバックアップがない中での孤独な戦いに耐えられるメンタルがなければ、プロとして生き残ることは難しいでしょう。

社会保障やセカンドキャリアへのサポートが薄くなる

企業に雇用されている実業団選手は、厚生年金や健康保険、雇用保険といった充実した社会保障を受けられます。また、企業内での研修や実務経験を通じて、引退後に社内で働くためのスキルを身につける機会もあります。しかし、プロ選手は「個人事業主」となるため、これらの恩恵を受けられません。

年金は国民年金となり、将来の受給額は厚生年金に比べて少なくなります。健康保険料も全額自己負担です。また、選手を引退した瞬間に収入源が完全に断たれるため、現役中から計画的に資産運用を行ったり、引退後のビジネスプランを構築したりしておかなければ、生活が立ち行かなくなる恐れがあります。

もちろん、有名選手であれば指導者としての道もありますが、すべてのプロ選手が成功できるわけではありません。実業団のように「引退後も会社に残って安定した生活を送る」という選択肢が最初から排除されている点は、人生設計において非常に大きなリスクといえるでしょう。

練習拠点の確保や事務手続きをすべて自分で行う負担

プロになると、バドミントンだけに集中していれば良いわけではありません。実業団なら専用の体育館がありますが、プロは自分で練習場所を確保しなければなりません。トップレベルの練習環境を維持するために、各地の体育館を予約したり、質の高い練習相手(スパーリングパートナー)を自費で呼んだりする必要があります。

また、遠征のためのビザ申請、ホテルの予約、航空券の手配といった煩雑な事務作業も、マネージャーがいない場合は自分で行わなければなりません。さらに、スポンサー企業との契約交渉や、年に一度の確定申告などの税務処理も避けては通れない課題です。

こうしたコート外での業務に時間と労力を奪われることで、肝心の練習時間が削られたり、休養が不足したりすることも起こり得ます。セルフマネジメントが得意な選手であれば問題ありませんが、多くの選手にとって、こうした裏方業務の負担は想像以上に重くのしかかります。

実業団とプロの環境を項目別に詳しく比較

選手がどちらの道を選ぶべきか判断するために、実業団とプロの環境を項目別に整理しました。それぞれのメリット・デメリットを比較してみると、現在の日本バドミントン界における選択肢の幅が見えてきます。

項目 実業団選手 プロ選手
身分 企業の従業員(正社員・契約社員) 個人事業主
主な収入源 月給・賞与(固定給) スポンサー契約金・大会賞金
活動費負担 企業が全額負担 すべて自己負担
練習環境 自社保有の体育館等 各自で確保・交渉
引退後 社内での業務継続が可能 自身で開拓する必要がある

収入の安定性とボーナスの有無

実業団選手の強みは、何といっても「固定給」という安定感です。成績にかかわらず毎月決まった日に給与が振り込まれ、夏と冬にはボーナスも支給されます。この安定感があるからこそ、金銭的な不安を抱えずに練習に打ち込めるという側面があります。福利厚生も企業の制度が適用されるため、生活基盤は非常に強固です。

一方、プロ選手は「成果報酬」が基本です。契約内容によっては固定の契約金もありますが、基本的には結果を出さなければ収入は増えません。ただし、世界大会で優勝すれば数百万円、年間王者になれば数千万円といった高額賞金が一度に入ります。この「一攫千金」のチャンスがあるのはプロならではの醍醐味です。

また、スポンサー企業とのボーナス条項を上手く設定すれば、特定の大会での勝利によって実業団では考えられないような臨時収入を得ることも可能です。安定を求めるなら実業団、大きなリターンを狙うならプロという、対極的な構造になっています。

練習環境と施設利用の利便性

実業団チームの多くは、自社で冷暖房完備の専用体育館を所有しています。いつでも好きな時間に、バドミントンに最適な床材が敷かれたコートで練習できる環境は、世界的に見ても非常に恵まれています。シャトルなどの消耗品も潤沢に供給され、チームメイトとの組織的な練習も容易です。

プロ選手の場合、こうした「当たり前の環境」を自分で作る必要があります。民間の体育館を借りる場合、利用時間が限られていたり、床が滑りやすかったりと、質の高い練習を行うのに苦労することも少なくありません。トッププロの中には、実業団チームの練習に「外部参加」という形で混ぜてもらうよう交渉する選手もいます。

しかし、プロは自分のペースに合わせて練習時間を設定できる自由があります。例えば、海外遠征の時差調整のために深夜に練習したり、集中的な強化のために短期間だけ特定の場所へ籠もったりすることも可能です。環境を維持するコストはかかりますが、自分流を貫ける利便性はプロに軍配が上がります。

引退後のキャリアパスと企業内での立場

実業団選手の多くは、現役中から社内の部署に配属されており、午前中は業務、午後は練習といった生活を送るケースもあります。これにより、社会人としての最低限のマナーや実務知識が身につきます。引退後はそのまま会社に残り、正社員として安定したキャリアを歩む道が用意されているのは、精神的な安心感に繋がります。

対してプロ選手は、引退した瞬間に「無職」となります。そこからは、現役時代の知名度を活かしたコーチ業、解説者、講演活動、あるいは全く別のビジネスなど、すべてを自力で構築しなければなりません。現役中に十分な貯えができなかったり、セカンドキャリアの準備を怠ったりすると、厳しい現実に直面することになります。

ただし、プロとして成功し、社会的な影響力を持った選手であれば、企業の役員に迎えられたり、自身で会社を経営したりするなど、実業団選手では到達できないような高いポジションでのキャリアを築ける可能性もあります。プロのキャリアは、引退後も含めて「自分次第」という側面が強いのです。

日本代表活動との両立のしやすさ

日本代表に選出された場合、実業団選手もプロ選手もナショナルチームの合宿や遠征に参加します。この期間の費用は協会が負担してくれるため、プロ選手にとっては活動費を抑えられる貴重な機会となります。以前は実業団の行事が優先されることもありましたが、現在は代表活動が最優先される傾向が強まっています。

プロ選手にとって、日本代表であり続けることはスポンサー価値を維持するために不可欠です。代表から外れると国際大会への自費派遣の許可も得にくくなるため、プロ活動そのものが成立しなくなるリスクがあります。そのため、プロ選手は実業団選手以上に、代表選考に直結するランキング管理に敏感になります。

一方、実業団選手は代表から外れても、国内のS/Jリーグなどのチーム戦で活躍すれば企業への貢献が認められます。代表活動に依存しすぎず、チームという「居場所」があることは、精神的な余裕を生みます。プロは「日本代表」という看板が生命線になるという、よりタイトな関係性にあります。

プロ転向を成功させるために必要な選手個人の資質

バドミントンのスキルが高いからといって、誰もがプロとして成功できるわけではありません。組織の支援を離れて一人で戦っていくためには、競技力以外の多才な能力が求められます。ここでは、プロ転向に向いている選手の特徴を挙げます。

プロへの道は単なる「肩書きの変化」ではなく、一人の「経営者」として自立することを意味します。コート内での勝利と同じくらい、コート外での立ち振る舞いが重要視されます。

徹底した自己管理能力とストイックな姿勢

プロには「サボる」ことを止めてくれる監督や先輩はいません。毎日の練習メニュー、睡眠時間、食事内容、ケアのタイミングなど、すべてを自分で決定し、実行し続けなければなりません。少しでも甘えが出れば、それはすぐにコート上の結果として跳ね返ってきます。

また、金銭管理も自己管理の重要な一部です。スポンサーから得た資金を、どのように遠征やスタッフに配分するか、どれだけを将来のために残しておくか。こうしたマネジメントを、誘惑に負けずストイックに行える選手こそが、プロとしての活動を長く継続させることができます。

さらに、怪我の予防に対しても人一倍の注意が必要です。自分の体が唯一の資本であることを理解し、少しの違和感も見逃さずに適切な対処ができる細やかさが求められます。自己責任という言葉を重く受け止め、自らを厳しく律することができる精神性が、プロ成功の第一条件です。

スポンサーを惹きつける魅力と発信力

プロとして資金を得るためには、企業に対して「この選手を応援したい」「この選手に投資すれば自社のイメージが良くなる」と思わせる魅力が必要です。それは必ずしも「強さ」だけではありません。清潔感のある振る舞い、誠実な受け答え、そして自身の信念を言葉にする力が必要です。

現代のプロ選手にとって、SNSなどを通じた発信力は必須スキルといえます。自分の活動をタイムリーに発信し、多くのファンを獲得している選手は、スポンサーにとっても広告価値が高いと判断されます。試合の結果だけでなく、日々の努力の過程やバドミントンに対する想いを可視化できる能力が問われます。

また、スポンサー企業とのミーティングにおいて、自分を支援することのメリットを論理的に説明できるプレゼン能力も、プロ転向を検討するなら身につけておくべきです。「ただバドミントンが好き」なだけでなく、社会の中で自分がどのような役割を果たせるかを言語化できる選手が、多くの支援を集めます。

チームをマネジメントするリーダーシップ

プロは一人で戦っているようでいて、実は多くのスタッフに支えられています。コーチ、トレーナー、マネージャー、そしてスポンサー企業の担当者。こうした関係者たちを一つの方向へ導き、自分の夢を共有するリーダーシップが必要です。

スタッフが気持ちよく働けるような気配りができるか、明確なビジョンを提示してモチベーションを高められるか。選手自身がチームの「CEO」として機能することで、初めて周囲のサポートを最大限に引き出すことができます。感謝の気持ちを忘れず、周囲を巻き込んでいく人間力が、厳しいプロの世界を生き抜く力になります。

逆に、スタッフを単なる「雇われ人」として扱い、コミュニケーションを疎かにする選手は、いざという時に助けてもらえず、チームが崩壊してしまいます。プロとして成功している選手の多くは、コート外での人間関係の構築にも非常に長けており、周囲から愛される存在であることが多いのも納得の結果です。

バドミントンのプロ転向はメリット・デメリットを見極めることが重要

まとめ
まとめ

バドミントンのプロ転向は、競技人生において非常に大きな決断です。これまで見てきたように、プロになることで得られる「活動の自由度」や「収入の最大化」といったメリットは、世界トップを目指す選手にとって非常に魅力的です。自分専用のチームを作り、スケジュールを最適化することは、勝利への可能性を大きく広げてくれるでしょう。

一方で、「経済的な不安定さ」や「すべての自己責任」というデメリットは、常に選手を追い詰めるリスクとなります。実業団という手厚い保護から離れ、一人の個人事業主として荒波に漕ぎ出すには、相当な覚悟と準備が必要です。競技力はもちろんのこと、ビジネス感覚や自己管理能力、そして周囲を惹きつける人間性が成功の鍵となります。

もしあなたがプロ転向を考えているのなら、以下のポイントを自分自身に問いかけてみてください。

・自分一人の力で、年間数百万円から数千万円の活動費を確保できる見込みがあるか

・結果が出ない時期や怪我をした際のリスクを、具体的に想定できているか

・バドミントン以外の事務作業や管理業務をこなす覚悟があるか

・自分を支えてくれる「チーム」を率いるリーダーシップがあるか

プロ転向は、バドミントン選手としての新しい挑戦であると同時に、一人の人間としての自立でもあります。メリットとデメリットを天秤にかけ、自分にとってどちらの道がより情熱を燃やせるのかを慎重に判断してください。どちらの道を選んだとしても、バドミントンに真摯に向き合う姿勢こそが、あなたの未来を切り開く唯一の手段であることに変わりはありません。

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