バドミントンの試合中、トッププレーヤーたちが大きな声を出しながらプレーしている姿をよく見かけます。初心者の方や部活動を始めたばかりの方の中には、「なぜあんなに叫ぶ必要があるのだろう?」と不思議に思う方もいるかもしれません。
実は、バドミントンの試合中における声出しには、単なる気合入れ以上の大きなメリットが隠されています。声を出すことは、自分自身の身体能力を最大限に引き出し、メンタルを安定させるための非常に合理的なテクニックなのです。
この記事では、バドミントンの試合中に声を出すことで得られる生理的・心理的なメリットから、ダブルスでの連携、さらには守るべきマナーまで詳しく解説します。この記事を読めば、声出しがあなたのプレーをどのように変えるのかが明確に理解できるでしょう。
バドミントンの試合中に声出しを行う主な物理的・生理的メリット

試合中に声を出すことは、私たちの体に直接的な影響を与えます。ただ感情を表に出しているだけでなく、筋肉の動きや呼吸の状態を整える効果があるため、技術的なパフォーマンス向上に直結します。ここでは、物理的・生理的な観点から見たメリットを詳しく解説します。
「シャウト効果」によって瞬発的なパワーが向上する
スポーツ科学の分野では、声を出すことで筋出力が上がる現象を「シャウト効果」と呼びます。大きな声を出しながら運動を行うと、脳の抑制が一時的に外れ、普段はセーブされている筋肉の力を最大限に引き出すことが可能になります。
バドミントンは、時速400キロを超えるシャトルを打ち返し、コート内を激しく動き回る非常にハードなスポーツです。スマッシュを打つ瞬間や、遠くのシャトルに飛びつく瞬間に声を出すことで、全身の筋肉がより力強く連動し、力強いショットや素早いフットワークを生み出します。
実際に、声を出すことで筋力が5%から10%程度向上するという研究結果もあります。自分の限界を超えた一撃を放ちたい場面や、苦しい体勢からシャトルを拾い上げたい場面において、声出しは肉体的なサポートとして非常に有効な手段といえるでしょう。
全身の余計な緊張がほぐれてスムーズに動ける
試合で緊張すると、肩に力が入ったり足が止まったりして、普段通りのプレーができなくなることがあります。これは交感神経が過剰に優位になり、筋肉が硬直してしまうことが原因です。声を出すという行為は、この余計な力みを解消する助けになります。
お腹の底から声を出すと、腹圧が高まると同時に末梢の筋肉がリラックスしやすくなります。特にバドミントンのような繊細なラケットワークが求められる競技では、手首や肘の柔軟性が欠かせません。声を出して体の強張りを解くことで、しなやかなスイングが可能になります。
また、声を出すことで「動くためのスイッチ」が入ります。静止した状態から一歩目を踏み出す際、声を出すことで全身の連動性が高まり、スムーズな動き出しを実現できます。体が重く感じる時こそ、意識的に声を出して筋肉を活性化させることが大切です。
呼吸が安定し酸素の供給がスムーズになる
バドミントンの長いラリーが続くと、息が上がって苦しくなる場面が多くあります。必死にプレーしている最中は無意識に呼吸を止めてしまいがちですが、これが酸欠状態を招き、スタミナ切れや集中力の低下を引き起こす要因となります。
声を出すことは、強制的に息を吐き出す動作に繋がります。人間は息を吐けば自然と新鮮な空気を吸い込むようにできているため、声を出す習慣をつけることでリズム良く呼吸を繰り返せるようになります。これにより、体内に効率よく酸素が取り込まれ、持久力が維持しやすくなります。
激しいラリーの合間や、ポイントが決まった後に短く発声するだけでも、呼吸を整える効果があります。酸素が脳や筋肉に十分に行き渡ることで、試合終盤でも高いパフォーマンスを維持できるようになるでしょう。
声出しによる主な生理的メリットまとめ
・シャウト効果で筋出力とパワーがアップする
・筋肉の余計な硬直を防ぎ、スムーズな動きをサポートする
・強制的な呼気によって呼吸が整い、持久力が向上する
メンタル面をコントロールする!声を出すことで得られる精神的なメリット

バドミントンは「メンタルのスポーツ」とも言われるほど、心理状態がプレーに大きく影響します。一度ミスをすると連鎖的にミスが続いたり、強気な相手に圧倒されたりすることも少なくありません。声を出すことは、こうしたメンタル面の揺らぎを制御するために欠かせない要素です。
自信を深めて積極的なプレーを引き出す
自分自身に対して「さあ行こう!」「よし!」と声をかけることは、自己暗示のような効果をもたらします。ポジティブな言葉を口にすることで脳が活性化し、ドーパミンなどのホルモンが分泌されやすくなります。その結果、消極的な気持ちが消え、強気なプレーができるようになります。
特に劣勢の場面では、どうしても「ミスをしたらどうしよう」という不安が頭をよぎります。しかし、そこで敢えて声を出すことで、自分は戦う準備ができているという姿勢を脳に認識させることができます。自分の声を聞くことで、再び戦う意欲を奮い立たせることができるのです。
自信はプレーの精度に直結します。迷いながら振るラケットと、確信を持って振るラケットでは、ショットの勢いも正確性も全く異なります。声を出すことで自分の心を鼓舞し、攻めの姿勢を維持することは、勝利を手繰り寄せるための重要な戦略となります。
プレッシャーによる焦りや雑念を払拭する
重要な局面や、勝ち急いでいる場面では、雑念が入りやすくなります。観客の目線やスコアのことばかり考えてしまい、目の前のシャトルに集中できなくなることは誰にでもあります。声を出す行為は、こうした意識の散漫を防ぎ、現在の瞬間へと意識を引き戻す効果があります。
大きな声を出すと、脳内の情報処理が一時的に「発声」に集中するため、余計な考え事がシャットアウトされます。これを心理学的な切り替えの手法として利用する選手は多いです。ひとつのプレーが終わるごとに短く発声することで、終わったことを引きずらずに今のプレーに没入できます。
また、声を出すことで心拍数の過度な上昇を抑えるリラックス効果も期待できます。焦っている時ほど呼吸は浅く速くなりますが、声を出すことで呼吸のペースが一定になり、冷静さを取り戻すきっかけになります。パニックになりそうな時こそ、まずは一言、声を出してみましょう。
ミスをした後のネガティブな感情をリセットする
バドミントンでは、誰しも必ずミスをします。大切なのはミスをした後の「切り替え」です。悔しさや怒りを内に溜め込んでしまうと、次のラリーでも同じような失敗を繰り返すリスクが高まります。声を出すことは、こうした負の感情を体外に放出する役割を果たします。
ミスをした瞬間に「次!」「どんまい!」と発声することで、脳に対して「今のプレーは終了し、次は新しい局面である」という合図を送ることができます。言葉として発することで、感情的な整理がつきやすくなり、視線を前へと向けることができるようになります。
感情を引きずらない選手は、常に高い集中力をキープできます。反対に、無言で俯いてしまうと、どうしてもネガティブな思考のスパイラルに陥りやすくなります。自分のミスを許容し、前向きな言葉を添えて声を出すことで、精神的なスタミナを温存することが可能になります。
ダブルスで勝利を掴むための声出しとコミュニケーション術

ダブルスにおいて、声出しは個人のパフォーマンス向上以上の意味を持ちます。二人の呼吸を合わせ、戦術を共有するための「コミュニケーションツール」として機能するからです。ペアとの連携を深めるための具体的なメリットについて見ていきましょう。
プレーの優先順位を明確にしてお見合いを防ぐ
ダブルスで最も避けたいミスのひとつが、二人の間に来たシャトルを譲り合ってしまう「お見合い」や、逆に二人とも手を出して衝突してしまうトラブルです。これらを防ぐためには、インプレー中の瞬時な声掛けが極めて重要になります。
自分が打つときは「はい!」や「オーライ!」、パートナーに任せるときは「任せた!」「前!」など、短い言葉で意思表示をします。これにより、コンマ数秒の世界で迷う時間がなくなり、迷いなくラケットを振ることができます。声による情報の共有は、ダブルスにおける「第三の目」となります。
特に高速なドライブ合戦や、相手の強烈なスマッシュをレシーブする場面では、視覚情報だけでは判断が遅れることがあります。パートナーの力強い声を聞くことで、自分がカバーすべき範囲が明確になり、コート上の穴を埋める鉄壁の守備を築くことができるようになります。
ペアのモチベーションを維持・向上させる
バドミントンのダブルスは、一人では勝てません。自分が調子良くても、パートナーが落ち込んでいればチームとしての力は半減してしまいます。逆に、自分がミスをした時にパートナーから温かい声掛けがあれば、驚くほど救われるものです。
「ナイスショット!」「いいコース!」「惜しい!」といったポジティブな声掛けを絶やさないことで、コート内の雰囲気が明るくなります。モチベーションが高まれば、二人の反応速度も上がり、相乗効果でプレーの質が向上します。声を出すことは、パートナーへの信頼を示す行為でもあるのです。
試合の流れが悪い時こそ、二人で声を掛け合って鼓舞し合うことが大切です。沈黙は不安を増長させますが、声は勇気を与えます。ペアの間で絶え間なく言葉を交わすことで、相手ペアに対しても「この二人は崩れない」というプレッシャーを与えることができます。
戦術の確認と「流れ」の共有をスムーズにする
ラリーとラリーの間の短い時間にも、声出しによるコミュニケーションのメリットがあります。サーブを打つ前の意思確認や、相手の弱点を共有する際の短い一言が、次のポイントの獲得率を大きく左右します。
「センター狙おう」「次はロングサーブ来るよ」といった具体的なアドバイスだけでなく、「一本取ろう!」「焦らずいこう」といったリズムの共有も不可欠です。言葉を交わすことで二人の思考が同期され、一貫性のある攻撃や守備を展開できるようになります。
また、得点を取った際に二人で声を揃えて喜ぶことで、チームとしての「勢い」が生まれます。バドミントンにおける「流れ」は非常に抽象的なものですが、声を出すことでその流れを自分たちの方へ引き寄せ、固定化することができます。
| 状況 | おすすめの言葉 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 自分が打つとき | 「はい!」「OK!」 | 衝突やお見合いを防止する |
| パートナーが良いプレーをした時 | 「ナイッショー!」「ナイス!」 | ペアの士気を高め、勢いを作る |
| ミスをしてしまった時 | 「どんまい!」「次いこう!」 | ネガティブな感情をリセットする |
| 戦術を合わせる時 | 「前詰めて!」「ゆっくり!」 | 二人のプレーに一貫性を持たせる |
試合で恥ずかしくない!初心者におすすめの「掛け声」のバリエーション

声を出すメリットは理解できても、「何を言えばいいのか分からない」「大声を出すのが恥ずかしい」と感じる方もいるでしょう。ここでは、初心者の方でも自然に使い始められる定番の掛け声や、シーン別のバリエーションをご紹介します。
気合を入れる・自分を鼓舞する時の定番フレーズ
最も一般的で使いやすいのが、自分の気持ちを高めるための短い発声です。無理に難しい言葉を使う必要はありません。トップ選手も多く使っているフレーズから自分に合うものを選んでみましょう。
定番は「さあ!」「よし!」「はい!」などです。これらの言葉は短く、腹の底から力を入れやすいため、試合のリズムを作るのに適しています。また、自分を応援する意味で「いける!」「集中!」と呟くように声を出すのも効果的です。
声の大きさは、自分が「スイッチが入った」と感じられる程度で十分です。最初から叫ぶのが難しければ、自分に聞こえる程度のボリュームから始めてみましょう。徐々に慣れてくると、自然と力強い声が出るようになり、それに伴ってプレーの鋭さも増していくはずです。
ペアやチームメイトへのポジティブな声掛け
自分一人で声を出すのが苦手な場合は、誰かを褒めたり励ましたりすることから始めてみるのがおすすめです。他人への声掛けは、結果として自分自身の緊張を解くことにも繋がります。
「ナイスショット」「ナイスサーブ」は基本中の基本です。また、相手が惜しいミスをした時に「ナイスファイト」「どんまい」と言うだけでも、ペアとの信頼関係が深まります。ポイントが決まった時に「よっしゃ!」と一緒に喜ぶのも、チームスポーツとしての醍醐味です。
ポジティブな言葉を発している間は、脳はネガティブな情報を処理しにくくなります。つまり、仲間を励ます声出しは、自分自身のメンタルを安定させるための最も効率的な防衛策でもあるのです。明るい声が飛び交うコートでは、自然と体も軽く動くようになります。
相手を威圧するのではなく自分の世界を作るための発声
声出しには心理戦の側面もありますが、本来の目的は「自分のベストを引き出すこと」にあります。相手を怖がらせるための威嚇ではなく、自分のゾーン(高度な集中状態)に入るための儀式として声を出すと、非常にスマートで効果的です。
ラリーが決まった瞬間に、ぐっと拳を握りながら短く発声する動作は、自分の成功体験を脳に強く刻み込む効果があります。これにより「今の感覚で打てば決まる」という自信が定着し、再現性の高いプレーが可能になります。
周りの音や相手の様子が気にならなくなるくらい、自分の呼吸と発声に集中してみてください。自分だけの心地よいリズムで声を出すことができれば、外部のプレッシャーに左右されない強固なメンタルを築くことができるでしょう。
最初は照れくさいかもしれませんが、練習のゲーム形式から意識的に声を出してみましょう。習慣化すれば、試合本番でも自然と声が出るようになります。
知っておきたい!バドミントンの試合中における声出しのマナーとルール

声出しには多くのメリットがありますが、自由奔放に叫んで良いわけではありません。バドミントンは紳士のスポーツであり、相手に対するリスペクトが重視されます。ルール違反やマナー違反にならないための注意点を確認しておきましょう。
インプレー中に相手を妨害するような声出しは禁止
バドミントンの競技規則では、相手のプレーを故意に妨げる行為は制限されています。特に注意が必要なのが、相手がシャトルを打とうとする瞬間に大声を出すことです。これは「ディストラクション(妨害)」と見なされ、警告や失点の対象となる可能性があります。
基本として、インプレー中に声を出す場合は、自分が打つ瞬間やペアへの合図に留めるのがマナーです。相手がショットを打つタイミングでは静かに見守るのがルール。相手を驚かせてミスを誘うような行為は、スポーツマンシップに反するだけでなく、正式な試合では罰則を受けるリスクがあります。
声を出すタイミングは「自分が打つ時」または「ラリーが途切れた時」と覚えておきましょう。メリハリをつけた発声こそが、質の高いプレーヤーとして認められるための条件です。
相手への暴言や威嚇と取られる態度は避ける
感情が高ぶるあまり、相手を罵倒するような言葉や、見下すような掛け声を出すことは絶対にあってはいけません。また、相手のミス(サービスミスやラッキーな失点)に対して異常に大きな声で喜ぶことも、マナー違反とされることが一般的です。
ガッツポーズや喜びの声は、あくまで自分の好プレーやペアの頑張りに対して向けるべきものです。相手のネットインやフレームショットでの得点に対しては、軽く手を挙げて「すみません」の意を示すのがバドミントンの美しいマナーです。
審判に対しても同様です。判定に不満があるからといって、声を荒らげることは厳禁です。礼儀正しく、かつ情熱的にプレーする姿勢こそが、観客や周囲から応援される選手を作るのです。
適切な音量とタイミングを見極める
声の大きさにも配慮が必要です。隣のコートで別の試合が行われている場合、あまりにも大きな叫び声は他のプレーヤーの集中を削いでしまうことがあります。特に市民大会や学生の大会など、多くのコートが並んでいる会場では周囲への配慮が欠かせません。
気合を入れるのは良いことですが、度を越した絶叫は控えましょう。芯のある通る声であれば、それほど大きなボリュームでなくても、自分自身を十分に鼓舞することができます。会場の広さや雰囲気に合わせ、適切なボリュームで声を出すことが洗練されたプレーヤーの振る舞いです。
また、ポイントが決まった後の喜びの声も、あまりに長く続けると試合進行の妨げになります。速やかに次のラリーの準備に入るための切り替えとして、短く鋭い発声を心がけるのがスマートです。
声出しのマナーチェックリスト
・相手が打つ瞬間に叫んでいないか?
・相手を威嚇したり罵倒したりする言葉を使っていないか?
・相手の運の悪いミスに対して大喜びしていないか?
・隣のコートの迷惑になるほどの絶叫になっていないか?
バドミントンの試合中の声出しのメリットを理解して技術向上に繋げよう
バドミントンの試合中に声を出すことは、単なる精神論ではなく、科学的・論理的な裏付けのある素晴らしいスキルです。物理的にはパワーを高め、生理的には呼吸とリラックスを助け、心理的には自信と集中力を授けてくれます。
特にダブルスにおいては、声出しがペアの絆を深め、戦術的なミスを減らすための命綱となります。お互いを称え合い、意思を疎通させることで、一人では到底届かないような高いレベルのプレーが可能になるでしょう。
もちろん、ルールやマナーを守り、対戦相手への敬意を忘れないことが大前提です。正しいタイミングと適切な内容で声を出すことができれば、あなたのバドミントンはより力強く、そして楽しいものへと進化していきます。次の練習や試合から、ぜひ自分らしい「声」をコートに響かせてみてください。



