バドミントンは、老若男女が楽しめる国民的なスポーツとして親しまれています。近年では日本代表選手が世界トップクラスで活躍し、多くの感動を私たちに与えてくれました。しかし、その華々しい活躍の陰で、過去には「バドミントン界の不祥事」として大きなニュースになった出来事も少なくありません。
スポーツは技術を競うだけでなく、誠実さや品格も問われるものです。過去の事例を振り返ることは、単なる批判のためではなく、二度と同じ過ちを繰り返さないための大切なステップです。本記事では、過去の事例と教訓を詳しく解説し、これからのバドミントン界がどうあるべきかを考えていきます。
不祥事の内容は、選手個人の行動から組織運営の問題まで多岐にわたります。ファンとして、また競技に携わる者として、正しい知識を持つことは競技の健全な発展につながります。この記事を通じて、バドミントンの未来がより明るくクリーンなものになるよう、大切な教訓を一緒に学んでいきましょう。
バドミントン界の不祥事 過去の事例とそこから学ぶべき教訓

スポーツ界において、不祥事は競技そのものの価値を大きく損なう要因となります。バドミントン界でも、過去にいくつかの深刻な問題が発生し、世間の注目を浴びることとなりました。これらの出来事は、選手のキャリアに大きな影響を与えただけでなく、競技団体全体の信頼を揺るがす事態にまで発展しました。
トップ選手を揺るがせた違法賭博問題の衝撃
2016年、日本のバドミントン界を揺るがす最大級の不祥事が発覚しました。当時、世界ランキング上位に名を連ね、リオデジャネイロ五輪でのメダル獲得が確実視されていた有力選手たちが、国内の違法カジノ店で賭博を行っていたことが明らかになったのです。このニュースは、競技ファンのみならず社会全体に大きな衝撃を与えました。
発覚のきっかけは、警察の捜査に関連して浮上した情報でした。中心的な役割を果たしたとされるベテラン選手は、多額の現金を賭けていたことが判明し、その後、日本バドミントン協会から「無期限の登録抹消」という極めて重い処分を受けることになります。また、期待の若手であった選手も五輪出場の道が断たれるという、非常に厳しい現実に直面しました。
この事件が教えてくれた最大の教訓は、アスリートが社会的な影響力を持つ存在であるという自覚の重要性です。競技の実力がいかに優れていても、社会的なルールや法律を逸脱すれば、それまで築き上げてきた努力は一瞬で無に帰してしまいます。個人のプライベートな行動が、競技全体のイメージを大きく損なう可能性があることを痛感させられた事例でした。
日本バドミントン協会による組織的な隠蔽と不適切会計
選手個人の問題だけでなく、競技を統括する「日本バドミントン協会」そのものの運営体制も大きな波紋を呼びました。2022年には、協会職員による約680万円の公金横領が発覚しましたが、問題はそれだけではありませんでした。協会幹部がその事実を把握しながら、長期間にわたって公表せず隠蔽していたことが明るみに出たのです。
さらに、国からの助成金に関しても不適切な申請が行われていたことが発覚しました。このような組織的な不正は、スポーツ団体の透明性が厳しく問われる現代において、極めて深刻な事態です。JOC(日本オリンピック委員会)からも厳しい指摘を受け、最終的には国からの強化費が20%削減されるといった実害が出る事態にまで発展しました。
組織としての「自浄作用」が働かなかったことが、被害を拡大させた要因といえます。身内のミスを隠そうとする体質が、結果として組織全体の首を絞めることになりました。ガバナンス(組織統治)の重要性を再認識させられるとともに、外部の目を入れた透明性の高い運営が不可欠であることを示す事例となりました。
オリンピックの舞台で起きた前代未聞の無気力試合
国際的な舞台でも、バドミントンの品格を損なう不祥事が発生しています。2012年のロンドン五輪女子ダブルスにおいて、複数のペアが「わざと負ける」ようなプレーを繰り返し、失格処分となる前代未聞の騒動が起きました。これは、決勝トーナメントでの対戦相手を有利にするために、予選リーグであえて敗北を選ぼうとした戦略的な行動でした。
しかし、観客席からはブーイングが飛び交い、コート上ではサーブをわざとネットにかけたり、相手のコート外へ打ち込んだりといった無気力なプレーが続きました。世界バドミントン連盟(BWF)はこれを重く受け止め、4組8名の選手を即座に失格としました。勝利のためにルールを逆手に取る行為は、スポーツマンシップの根本を否定するものとして厳しく批判されました。
この事例から学ぶべきは、スポーツの価値は結果だけで決まるのではないということです。観客や対戦相手への敬意を欠いた勝利追求は、誰の心も動かしません。勝利を目指すプロセスにおいて、「正々堂々と戦う」という基本精神を忘れてしまった時、競技はその輝きを失ってしまうのです。
世界を驚かせた違法賭博問題とトップ選手の社会的責任

バドミントン界の歴史において、違法賭博問題は避けて通れない大きな事件です。特に、将来有望な選手が関与していたことは、競技の普及活動にも大きなブレーキをかけることとなりました。アスリートが抱える重圧や、閉鎖的な環境におけるリスクが浮き彫りになった瞬間でもありました。
NTT東日本所属選手による闇カジノ店への出入り発覚
この問題の当事者となったのは、国内屈指の強豪であるNTT東日本バドミントン部の選手たちでした。警察の摘発を受けた東京都内の闇カジノ店に、複数の選手が頻繁に出入りしていたことが内部調査などで確認されました。当初は個人的な遊びの範囲内と考えられていたようですが、実際には多額の金銭が動いていたことが判明しました。
特に、日本男子バドミントンを長年牽引してきたトッププレーヤーが後輩を誘う形で関与していたことは、事態をより深刻にしました。所属企業であるNTT東日本も即座に反応し、関与した選手の解雇や停職、さらには部活動の半年間にわたる活動自粛を決定しました。社会人選手として給与を得ながら不法行為に手を染めた事実は、企業スポーツとしての信頼も大きく失墜させました。
この事件は、アスリートが競技以外の面でいかに「脇の甘さ」を持っていたかを示しています。狭いコミュニティの中で、先輩の誘いを断りにくいという体育会系の気質も災いした可能性があります。プロとしての自覚だけでなく、個人の倫理観を育む教育の重要性が改めて問われることとなりました。
リオデジャネイロ五輪出場権の剥奪と厳しい社会的制裁
不祥事による代償は、言葉では言い表せないほど大きなものでした。特に当時、世界ランキング2位まで上り詰めていた若手のエース選手にとって、目前に迫っていたリオデジャネイロ五輪の出場権を失ったことは、競技人生最大の痛手となりました。金メダル候補として期待されていた矢先の出来事であり、日本全体の期待を裏切る結果となったのです。
日本バドミントン協会が下した「無期限の競技会出場停止」という処分は、選手生命を断ちかねない厳しいものでした。スポンサー契約の解除やメディアからの猛烈な批判、そして何よりも積み上げてきたランキングポイントが全て抹消されるという制裁は、その後の競技復帰を限りなく困難にするものでした。社会からの冷ややかな視線は、長い間選手を苦しめることになります。
一度失った信頼を取り戻すには、過ちを犯した時間の何倍もの努力が必要になります。この事例は、一瞬の判断ミスが一生の後悔に繋がることを、全てのアスリートに知らしめました。華やかな舞台の裏側には、常に社会的な責任が伴っていることを忘れてはなりません。
桃田賢斗選手の復帰と世界王者返り咲きに見る精神的成長
不祥事から1年余りが経過した2017年、厳しい反省期間を経て、桃田賢斗選手の出場停止処分が解除されました。彼は復帰にあたり、それまでの派手な振る舞いを改め、謙虚な姿勢で練習に打ち込む姿を見せました。地方の大会からコツコツと勝ち星を積み上げ、ゼロから世界ランキングを駆け上がっていく姿は、多くの人の心に変化を与えました。
驚くべきことに、復帰後の桃田選手は以前よりも圧倒的な強さを発揮しました。2018年には世界選手権で優勝し、日本人男子初の快挙を成し遂げ、ついには世界ランキング1位にまで返り咲きました。これは単なる技術の向上だけでなく、過ちから学び、精神的に大きく成長した結果といえるでしょう。彼はインタビューで「多くの人に支えられた感謝をコートで示したい」と語るようになりました。
彼の再起は、不祥事を起こした者への「セカンドチャンス」のあり方についても考えさせるものとなりました。罪を認め、真摯に向き合い、行動で示し続けることで、一度失った信頼は少しずつ回復できることを証明しました。もちろん過去は消えませんが、その教訓を力に変える姿勢こそが、真のアスリートの姿なのかもしれません。
誘惑を断ち切るために必要なプロ意識と環境整備
違法賭博問題は、特定の選手が「特別に悪かった」だけで片付けられる問題ではありません。トップアスリートは多額の賞金を手にする機会があり、一方で過酷な練習やプレッシャーにさらされています。そのような状況下で、刺激を求めて不適切な娯楽に足を踏み入れてしまうリスクは、常にどの競技にも潜んでいます。
再発を防ぐためには、選手個人のメンタルケアとともに、誘惑に負けないための徹底した教育が必要です。例えば、日本バドミントン協会は事件後、コンプライアンス講習を義務化し、違法行為のリスクやアスリートとしての社会的影響を繰り返し説いています。また、周囲の人間が異変に気づき、相談できるような風通しの良い環境作りも欠かせません。
プロ意識とは、試合で勝つことだけを指すのではありません。自分の価値を高め、競技を愛する子供たちの手本であり続けることこそが、プロとしての本当の仕事です。不祥事をきっかけに、競技団体も選手も、「何のためにバドミントンをしているのか」という原点を問い直すこととなりました。
日本バドミントン協会の組織的課題とガバナンス改革

バドミントン界を揺るがせたのは、選手の行動だけではありませんでした。競技を統括し、模範となるべき「日本バドミントン協会」によるガバナンス(組織統治)の欠如が、深刻な問題として浮上しました。不透明な会計処理や隠蔽体質は、組織の根本的な腐敗を象徴するものでした。
元職員による公金横領と私的流用の実態
2018年から2019年にかけて、日本バドミントン協会の元職員が協会の資金約680万円を着服していたことが発覚しました。この資金は、合宿の宿泊費や遠征費、さらには国からの助成金なども含まれていました。選手たちが一生懸命戦って得た利益や、税金から賄われる公金が、個人の遊興費などに消えていたという事実は、断じて許されるものではありません。
経理チェックの甘さが、不正を長期間許してしまった要因の一つです。一人の職員に権限が集中し、周囲が内容を把握していなかったことが被害を拡大させました。また、現金でのやり取りが多く記録が不十分だったことも、不正の温床となりました。スポーツ団体といえども、公金を扱う以上は一般企業と同等、あるいはそれ以上の厳格な管理体制が求められます。
【不適切会計の主な内容】
・元職員による約680万円の公金横領(私的流用)
・理事有志による「私費での穴埋め」という不適切な処理
・JOCに対する虚偽報告や隠蔽の試み
理事会による隠蔽工作とJOCからの厳しい警告
最も非難を浴びたのは、不正が発覚した後の協会の対応でした。当時の専務理事を中心とした幹部たちは、東京五輪を目前に控えていたことを理由に、「不祥事が公になれば選手に影響が出る」という名目のもと、事件を公表しないことを決定しました。さらには、不足した資金を理事たちが自腹で補填し、何事もなかったかのように処理しようとしたのです。
この「身内での解決」こそが、組織の隠蔽体質そのものでした。問題に蓋をすることで自分たちの地位を守り、社会的な説明責任を放棄したのです。外部からの通報によりJOCが調査に乗り出すまで、この事実は闇に葬られたままでした。JOCはこれを「極めて不誠実な対応」と断じ、バドミントン協会に対して厳しい指導と資格停止を含む重い警告を行いました。
隠蔽は、不祥事そのものよりも罪深いとされることがあります。一度ついた嘘を隠すためにさらなる嘘を重ねる姿は、スポーツを通じて誠実さを教える団体の姿ではありませんでした。この出来事を通じて、バドミントン界には「透明性の欠如」という深刻な病が蔓延していたことが浮き彫りになりました。
国庫補助金の不正申請が招いた強化費削減の代償
横領事件の裏で、さらに追い打ちをかけるような不祥事が発覚しました。それは、遠征費などの国庫補助金を不適切に申請し、受給していたという問題です。実績を水増ししたり、架空の領収書を使用したりといった行為は、もはや組織犯罪に近いレベルの背信行為です。これにより、日本バドミントン協会は「ガバナンス不適合」と判断されました。
その結果、スポーツ庁や日本スポーツ振興センター(JSC)から、次年度の強化費を大幅に削減されるという制裁を受けました。数千万円単位の資金が失われることは、代表選手の海外遠征やジュニア世代の育成に直結する大きな損失です。幹部が犯した過ちのツケを、最も守られるべき現役の選手たちが払わされるという、本末転倒な状況が生まれました。
この事例は、組織のリーダーシップが機能しないことが、いかに競技の現場に悪影響を及ぼすかを如実に示しています。公的な支援を受ける以上、ルールを遵守し、公正な運営を行うことは最低限の義務です。目先の利益や体裁を優先した結果、将来を担う若手選手の環境を壊してしまった責任は極めて重いといえます。
新体制による「変革」と外部の視点を取り入れた組織刷新
相次ぐ不祥事を受け、日本バドミントン協会はついに抜本的な改革へと動き出しました。2023年には長年トップを務めていた会長や専務理事が辞任し、新たなリーダーとしてサッカー・Jリーグでの実績がある村井満氏を会長に迎えました。競技界出身者だけで固めるのではなく、外部のプロフェッショナルな視点を取り入れることで、腐敗した体質を一新しようとする試みです。
新体制では、理事の人数を大幅に削減し、その多くを外部有識者や女性に割り当てるという画期的な改革が進められました。また、意思決定プロセスの透明化や、内部通報制度の整備など、不祥事を未然に防ぐための仕組みづくりも急ピッチで行われています。これまでの「閉鎖的なバドミントン村」から脱却し、社会に開かれた組織への生まれ変わりを目指しています。
改革はまだ始まったばかりですが、トップが変わることで組織全体の空気が変わりつつあります。過去の不祥事を「終わったこと」にせず、常に自省の念を持って運営を続けることが、失った信頼を取り戻す唯一の道です。バドミントンが再び国民に愛され、心から応援されるスポーツになるために、このガバナンス改革は極めて重要な意味を持っています。
競技の品格を損なう無気力試合とコート上のマナー

バドミントンの不祥事は、コートの外だけで起きるものではありません。競技の最中、あるいは試合の前後における「振る舞い」そのものが、スポーツマンシップに反する事例として歴史に刻まれているものもあります。これらは、バドミントンという競技の品格を直接的に傷つける行為として、世界中で議論を呼びました。
ロンドン五輪女子ダブルスでの「わざと負ける」選択
2012年ロンドン五輪の女子ダブルス予選リーグ。優勝候補の中国ペア、そして韓国やインドネシアのペア計4組が、不自然なミスを連発し、あからさまに負けようとする試合を行いました。その理由は、予選の順位を調整することで、決勝トーナメントの初戦で自分たちの国の別ペアと対戦するのを避け、メダル獲得の確率を高めるためでした。
会場を埋め尽くした観客は、最初こそ驚きを見せましたが、次第に激しいブーイングへと変わりました。五輪という最高峰の舞台で、選手たちが「勝つための努力」ではなく「負けるための工作」をしている姿は、スポーツの本質を侮辱する行為に他ならなかったからです。主審や審判員が何度も注意を与えましたが、プレーは改善されませんでした。最終的にBWFは、関与した全ての選手を失格処分にするという厳しい決断を下しました。
この事件は、勝利至上主義が行き過ぎた結果、何が一番大切かを見失ってしまった例といえます。戦略として負けを選ぶことが理論上は有利であっても、それを実行に移すことは観客やスポンサー、そして競技を支える全ての人々に対する裏切りです。バドミントンが五輪競技としてふさわしいかどうかという議論にまで発展した、非常に重い事例でした。
競技ルールを逆手に取った戦略と失格処分の是非
ロンドン五輪の無気力試合騒動は、競技システムそのものにも課題を突きつけました。当時のルールでは予選リーグの結果でトーナメントの配置が決まるため、意図的に負けることに「メリット」が生じてしまう欠陥があったのです。事件後、BWFはルールを改正し、決勝トーナメントの組み合わせを再抽選する方式を導入するなど、無気力試合を未然に防ぐ対策を講じました。
しかし、ルールを改善すれば全てが解決するわけではありません。選手やコーチの「倫理観」が何よりも重要です。処分を受けた選手の中には、自国の指導部から指示されていた者もいたと報告されています。国や組織の威信のために、スポーツマンとしての誇りを捨てさせるような環境が、不祥事を引き起こす根源となっていたのです。
失格処分を下された選手たちのキャリアは、この瞬間に大きく狂ってしまいました。ルールを守ることは当然ですが、ルールの精神(スピリット)まで尊重することの難しさと大切さを、この事件は教えてくれました。私たちは、システムを悪用しようとする誘惑に対し、常に「それは正しいことか」を自問しなければなりません。
カナダオープンで起きた乱闘騒ぎと暴力行為の波紋
もう一つ、バドミントン界で決して忘れてはならない衝撃的な事件があります。2013年のカナダオープン男子ダブルス決勝で、タイの元ペア同士が試合中に激しい口論となり、ついにはコート上で乱闘騒ぎを起こしたのです。一方の選手がもう一方の選手を追いかけ回し、殴打するという、テニスや卓球などを含むラケットスポーツ界でも類を見ない醜態をさらしました。
この様子は動画で世界中に拡散され、バドミントンは「野蛮なスポーツ」という不名誉なレッテルを貼られかけました。原因は以前からの個人的な確執とされていますが、神聖なコートの上で感情を抑制できず、暴力に訴えた代償はあまりにも大きなものでした。関与した選手には、世界バドミントン連盟から長期の出場停止処分が下され、スポンサー契約も全て失うこととなりました。
バドミントンは時に激しい感情がぶつかり合うスポーツですが、それはあくまでプレーの中で表現されるべきものです。暴力や暴言は、いかなる理由があっても正当化されません。この事件は、ジュニア世代に対しても「マナーと自制心」の教育がいかに重要であるかを痛感させる教訓となりました。
観客を裏切らない全力プレーこそがスポーツの原点
コート上での不祥事に共通しているのは、そこに「観客の存在」が忘れられているという点です。ファンがお金を払い、時間を割いて会場に足を運ぶのは、選手たちが限界に挑む真剣な姿を見たいからです。わざと負けたり、暴力で解決したりする姿を見るためではありません。スポーツは観客がいて初めて成り立つエンターテインメントでもあります。
コートに立つ選手には、全力でプレーし、ベストを尽くす義務があります。それは調子が良い時だけでなく、絶望的な点差がついている時や、怪我を抱えている時でも同じです。「自分たちがどう見られているか」を意識し、競技の品位を守ることは、トップ選手に求められる最低限の条件です。
不祥事は、一瞬にしてファンを失望させます。しかし一方で、過去の失敗を反省し、クリーンなプレーを続ける姿を見せることで、ファンは再び会場に戻ってきてくれます。バドミントンというスポーツの魅力を守るのは、ルールを運用する審判でも協会でもなく、コート上で戦う選手一人ひとりの姿勢なのです。
信頼回復のために必要な取り組みとファンへの誠実さ

相次いだ不祥事を経て、バドミントン界は今、信頼回復に向けた長い道のりを歩んでいます。二度と同じ過ちを繰り返さないために、表面的な謝罪だけでなく、具体的かつ継続的な取り組みが求められています。これからのバドミントン界が取り組むべき、再発防止の策について考えてみましょう。
コンプライアンス教育の徹底による意識の底上げ
最も重要なのは、選手や指導者、そして協会スタッフ一人ひとりの「意識」を変えることです。日本バドミントン協会は、全ての登録選手や関係者を対象としたコンプライアンス(法令遵守)研修を強化しています。単に法律を教えるだけでなく、スポーツが社会から受けている支援の意味や、不祥事が及ぼす広範囲な影響を、具体的事例を交えて伝えています。
特に、誘惑の多いプロの環境に身を置くトップ選手に対しては、個別の教育プログラムが必要です。金銭管理やSNSでの発信リスク、賭博の違法性など、アスリートとしての「リテラシー」を高める教育が重要です。知識を身につけることは、選手自身をトラブルから守ることにも繋がります。教育こそが、最も強力な再発防止策となります。
コンプライアンス研修の主なトピック
・公金や助成金の適切な扱いの理解
・違法ギャンブルや不適切な交遊のリスク管理
・SNSでの情報発信と社会的責任
・指導におけるハラスメント防止と人権尊重
ジュニア世代への教育とメンタルサポートの拡充
不祥事を未然に防ぐためには、トップ選手になってから教育するのでは遅すぎます。ジュニア世代、つまり子供たちの頃から、「スポーツの価値」や「人としてのあり方」を教えることが不可欠です。バドミントンが上手ければ何をしてもいいという考え方ではなく、尊敬される人間こそが真のチャンピオンであるという価値観を育む必要があります。
また、過度なプレッシャーから逃れるために不適切な行為に走ってしまうケースを防ぐため、メンタルサポートの充実も欠かせません。カウンセリング体制を整え、選手が悩みを一人で抱え込まない環境を作ることが大切です。技術の指導者だけでなく、選手の精神面や生活面をケアできる専門家の存在が、健全な育成環境には必要不可欠です。
子供たちはトップ選手の姿をよく見ています。憧れの選手が不祥事を起こせば、子供たちの夢も傷つきます。逆に、過ちを反省して立ち上がる姿や、誠実なプレーを続ける姿は、最高の教育材料になります。ジュニア世代の未来を守るためにも、現在のバドミントン界がクリーンであることは絶対条件です。
内部通報制度の確立と組織の自浄作用を高める仕組み
協会の不祥事で問題となった「隠蔽」を防ぐには、組織の中に異変を知らせる「声」が届く仕組みが必要です。外部の弁護士事務所などが窓口となる「内部通報制度」を確立し、告発者が不利益を被らないことを保証することが重要です。身内の不正を指摘しにくい体育会系の文化を打破し、おかしいことは「おかしい」と言える透明性が求められます。
さらに、組織の運営を一部の人間だけで決めるのではなく、定期的な外部監査を導入することも有効です。会計処理のプロセスをデジタル化し、誰でも確認できるような体制を整えることで、公金の私的流用といった不正の芽を摘むことができます。監視し合うのではなく、正しいプロセスを維持するための仕組みづくりが、組織の信頼を支えます。
ファンやスポンサーとの信頼を再構築する情報開示
失った信頼を取り戻すための最大のパートナーは、ファンとスポンサーです。不祥事によって離れてしまった人々に対し、現在の改革状況や防止策の進捗を積極的に公開していく必要があります。言葉だけでなく、行動と結果で示すことが誠実さの証明です。大会の運営方法や強化費の使い道をオープンにすることは、応援してくれる人々への敬意でもあります。
また、不祥事を起こした選手や組織が、どのように社会に貢献しようとしているかを発信することも大切です。地域貢献活動やジュニア育成、清掃活動など、地道な活動を通じて「変わった姿」を見せ続けることが、少しずつ心の壁を溶かしていきます。誠実な姿勢は、必ず誰かに届きます。
バドミントン界が再び「憧れの象徴」となるためには、これまでの歴史を隠さずに正面から向き合う勇気が必要です。不祥事という負の遺産を、より良い未来を築くための強力な糧にできるかどうか。今、バドミントンに携わる全ての大人の姿勢が問われています。その先には、純粋に羽を打つことを楽しむ子供たちの笑顔が待っているはずです。
まとめ:バドミントン界の不祥事を教訓に輝かしい未来へ
バドミントン界の不祥事 過去の事例と教訓を振り返ることで、スポーツ界が直面するリスクと、それを乗り越えるために必要な姿勢が見えてきました。違法賭博や組織の隠蔽、無気力試合といった出来事は、どれも競技の価値を大きく損なうものでしたが、同時に私たちに多くの学びを与えてくれました。
大切なのは、これらの事例を「自分たちとは無関係なこと」として片付けないことです。トップ選手の行動は競技全体のイメージを形作り、組織の運営は選手が全力を尽くせる環境を守る土台となります。一人の不注意や組織の慢心が、競技を愛する全ての人々を悲しませる可能性があることを、常に忘れてはなりません。
一方で、過去の失敗を認め、新体制での改革や誠実なプレーを通じて信頼を取り戻そうとする努力も続いています。不祥事をきっかけに、より透明性が高く、選手の人間教育を重視する組織へと進化できれば、バドミントン界は以前よりも強く、しなやかになれるはずです。私たちは、競技を支える仕組みが健全であることを常に注視し、応援していく必要があります。
これからも、コート上で繰り広げられる熱い戦いを純粋に楽しみ、応援できる環境を守り抜きましょう。クリーンで品格のあるバドミントン界を築くのは、選手、協会、そして応援する私たちファン全員の願いです。教訓を胸に、バドミントンの未来をより輝かしいものへと導いていきましょう。




